【ヒロアカ】Question (ページ16)

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【１５】ページ16

確かに彼女の言葉も御尤もだった。実家なら兎も角、僕の家にも救急箱なんて物は無く、幾ら彼女が看護師だからと言っても医療用具を備えている訳じゃない。だけど、こうして消毒液や必要な物がある事を思えば、僕の治療の為にわざわざ買い揃えてくれたのだろうと察する。

口が悪いけれど、何だかんだ言っても彼女は優しいのだろう。死に掛けた僕を家に連れ帰り、こうして治療を施してくれた。目が覚めた僕を即刻追い出す様な事も無く、言われた訳じゃないけれど、怪我が治るまではこの家に居ても良いと思わせてくれる。端的に言えば、面倒見が良いのだろう。ただ、口が悪いだけで不器用な人なんだと思う。

「ｯ……」

そんな事をぼんやりと思っていると、消毒液が傷口に滲み、思わず痛みから顔を顰めてしまう。

「常日頃ドンパチやってる癖に慣れない訳？」
「それとこれとは別物って言うか……」
「あっそ」

聞いておきながら全く興味無いとでも言う様な返事をする彼女は、ﾎﾟﾝﾎﾟﾝﾎﾟﾝﾎﾟﾝと綿球で軽く消毒を行い、何の薬かは分からないけど、それを新しいガーゼに多めに出し「うりゃ！」と嫌がらせの様に患部に叩き付けて来る。

「んぐっ！！ちょ！今のわざとだよね！？」
「ハア？知らんな」

憎たらしい！！何なんだ、この人は。と思いながら「君、職場でもそんな感じなの？」と呆れた様に言えば、彼女は「まさか、猫被ってるに決まってるじゃん」と平然と言って退ける。

確かに、院内での彼女は同じ看護師には素っ気無い態度を取っていたけれど、患者さんに対しては今よりも多少抑えていた様に見えた。口は悪かったけど。

くるくると新しい包帯を巻きながら「大体、看護師にどんな夢見てる訳？」と小馬鹿にする様に鼻で笑う彼女に「夢と言うか、優しいイメージはあると思うけど……」とﾓｺﾞﾓｺﾞと答える。

「良い事教えてやろう、デク。看護師ってのは大抵ナースコールを口実に逃げるか、人様に押し付けるか、イラつくかのどれかだよ」
「それ、全部君の事だよね？？」
「それはさて置き、経験上、緊急性のあるナースコールは患者じゃなくて、それを発見した看護師だの、何だののケースが多い」

病院にお世話になる事はあっても、その内情を知る事は無いからか、現場を知る彼女の経験談に半信半疑で耳を傾けつつも、少し興味が沸いてくる。