【２８８】夢主side ページ48
どうして、初めからその選択肢を選ばなかったのだろう。全部、そこにあったのに……何で思い付かなかったのだろう。
「Aさん！Aさん！？」
『やっと、解放される……』
必死に名を呼ぶ百ちゃんの声とは別に、直接頭に流れ込んで来た男の人の声。自然とビルから飛び降りたと思われるその人へと視線を向ける。
『逃げて良いんだ。これで漸く……妻に会える』
きっと、その人の個性なのだろう。生からの解放を望む声に耳を傾けながら、静かに目を閉じた。
そっか……そうなんだ。それで、良かったんだ。頑張らなくても、良いんだ。私が今までやって来た事は全部、無意味なものだったんだ。
「そっかぁ……ははっ、そうなんだ」
「Aさん……？」
なんて、愚かな事をしたのだろう。私は、大好きな人達の命を弄んだ。繰り返して、何度も死なせてしまった。世界を繰り返さなければ……彼が笑えなくなってしまう未来なんて、見ずに済んでいたのに。
彼と、あの世界で終わっていたら、それが私の幸せだったのに───…
「しっかりして下さい！！」
強く肩を揺すられ、涙目になっている百ちゃんを見ると、百ちゃんは「そちら側へ逝っては駄目！」と、私をこの世界に繋ぎ止める様に必死に呼び掛けてた。
「いかないで、下さい……っ」
「百ちゃん……」
「お願いですから……此処に、居て下さいっ」
百ちゃんの悲痛な声が何処か遠くで聞こえる様な感覚に、次第に思考が上手く働かなくなって来る。脳が考える事を放棄する様に、意識が遠退いていくのが自分でも分かった。
もう、何もかも全部……限界だったんだ。彼に生きてほしかった。彼に夢を叶えさせてあげたかった。私が壊してしまった彼の人生を、何もかも初めから仕切り直したかった。
誰一人欠ける事無く、皆と雄英を卒業して……ヒーローになりたかった。彼の隣で、ずっと笑っていたかった。だけど、もう……
「百ちゃん」
背負えない。
「終わりが……見えたよ」
百ちゃんにそう笑い掛けると同時に、私の意識は途切れたのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 233人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
パル(プロフ) - Pandaさん» 前回に引き続き、今回でもｺﾒﾝﾄ有難う御座います！度々更新が遅れてしまうかも知れませんが頑張って更新します！応援、本当に有難う御座います！感謝感謝です！ (2020年9月13日 12時) (
レス) id: a050d7518b (このIDを非表示/違反報告)
Panda - 続編おめでとうございます！今後も応援してます!続きがめっっっっっちゃ楽しみです！！！ (2020年9月13日 11時) (レス) id: 0b60fa6ccb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：パル | 作成日時：2020年9月5日 23時
