【２８７】夢主side ページ47
すると、突如果てしない虚無が襲い掛かってきたのだ。
「っ───…」
「Aさん！？」
「と、時枝！？どうした！？」
ﾄﾞｸﾞﾄﾞｸﾞと嫌な鼓動が急に泣き出した私を心配する二人の声をかき消してしまう。目眩にも似た感覚だけが残り、頭が真っ白になるのがはっきりと分かる。ｸﾞﾙｸﾞﾙと回り出す視界で、バランスが保てずにﾌﾗﾌﾗと揺れる身体を百ちゃんが支えてくれた時、それは私達の真後ろに落ちてきた。
ﾄﾞｻｯ……と、重みのある鈍い音と共に周囲から上がる悲鳴。頭がはっきりとして来た事により、振り返らなくとも“何が”落ちて来たのかを察してしまう。
「……」
巣食い、脈打ち、蠢く。見ては駄目だ、知っては駄目だ、それは答えなんかじゃない。と、本能が警告する。それを見てしまったら最後、自分は元の形には戻れなくなってしまう。逃げる事を知ってしまったら、私は……今度こそ、立ち上がれなくなってしまう。
それでも、もう……私の精神は彼の姿を留めてなどいなかった。抗う気力も、勇気も、覚悟も……何もかも全部、擦り切れ過ぎていて、そこにはただ……燃滓だけしか遺されていなかったのだ。
思い浮かべたこの世界の未来に、彼の幸せは存在していなかった。否、確かに存在していたのかも知れないが、彼はそれを受け入れてはいなかったのだ。
……私、何の為に、こんな事してたのかな。途端に全てが分からなくなってしまい、まるで……逃げ道を探す様に振り返る。目の前に映る“終着点”への道を。
「……」
鮮血が広がって行く光景、血溜まりに呑まれる様に死に浸るその人を見た時、今までの自分が酷く滑稽に思えてしまう。
嗚呼、羨ましいな。なんて事を思いながら、それを見下ろす。周囲の人達が悲鳴を上げる中、ビルから落ちてきたその人は、全てから解放されたかの様に、穏やかに笑っていた。
「っ、Aさん！！」
私の視界を奪う様に私を抱き締める百ちゃんは切島君に「直ぐに救急車を……！！」と、的確に指示を出していて、それを他人事の様に、ヒーローみたいだ、なんて空を仰ぎ見る。
そして、届かないそれに手を伸ばした時、自然と笑みが零れた。
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パル(プロフ) - Pandaさん» 前回に引き続き、今回でもｺﾒﾝﾄ有難う御座います！度々更新が遅れてしまうかも知れませんが頑張って更新します！応援、本当に有難う御座います！感謝感謝です！ (2020年9月13日 12時) (
レス) id: a050d7518b (このIDを非表示/違反報告)
Panda - 続編おめでとうございます！今後も応援してます!続きがめっっっっっちゃ楽しみです！！！ (2020年9月13日 11時) (レス) id: 0b60fa6ccb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：パル | 作成日時：2020年9月5日 23時
