【２８５】side無し ページ45
彼女にとって、元の世界の者達は唯一無二の存在であり、それを捨てさせまいとこの世界を裏切る事を提案した爆豪。そして、元の世界の緑谷が彼女に違った未来を託した思いを尊重し、この世界で生きていく上で彼女に付き纏う苦しみを無くす為、この世界そのものの流れを変えようと提案する八百万。
方法は違えど、そのどちらも時枝Aという一人の人間を守る為の言葉だったのである。
彼女が世界と爆豪を秤に掛け、爆豪を選んだ様に、爆豪もこの世界と彼女を秤に掛け、彼女を選んだ。この世界の自分達を心底大事に思う彼女に応える様に、八百万もまた、元の世界の過去に縛られ、苦しむ彼女を解放する為、世界を変える事を選んだ。
それは、彼女を大切に想うからこその選択であり、それ以外に無いと言っても過言では無い程に、二人の想いは強過ぎたのだ。甘んじて苦しみを受ける彼女にとって、その優しさが逆に彼女に何も選べなくさせているとも知らず……
苦しげに声にならない声を上げながら泣く彼女は、強く胸を押さえ込みながら首を横に振る。
「楽になりたいなんて、思ってない。この苦しみが消えて無くなれば良いなんて、思ってないの……」
「Aさん……」
「これは、当然の報いだから。自業自得なの」
「っ、そんな事は……！」
「百ちゃん……有難う」
もう一度「ありがとう」と眉を切なげに顰めながら笑う彼女は、八百万にそれ以上話を続けさせる事を許さなかった。
どうして、どうして……と、言葉にする事を許されなかったそれを心の中で繰り返し呟く八百万は、彼女の一人で背負い込む様な笑みに涙を零す。
「……っ」
その場に崩れ落ちる様に座り込み、悔恨の念に苛まれながら拳を固く握り締める。そんな八百万の涙を指先で拭った彼女は優しく微笑む。
「っ─────…」
「やっぱり、百ちゃんは……優しい子だ」
彼女のそれは、残酷なまでに優しい宣告だった。突き放すでも無く、拒絶するでも無く、彼女は八百万に突き付ける。
「私は何も、私自身の事は……望まない」
だから、良いの。そう八百万を抱き締めた彼女に、八百万は声を上げて泣くのだった。己の無力さを呪いながら───…
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パル(プロフ) - Pandaさん» 前回に引き続き、今回でもｺﾒﾝﾄ有難う御座います！度々更新が遅れてしまうかも知れませんが頑張って更新します！応援、本当に有難う御座います！感謝感謝です！ (2020年9月13日 12時) (
レス) id: a050d7518b (このIDを非表示/違反報告)
Panda - 続編おめでとうございます！今後も応援してます!続きがめっっっっっちゃ楽しみです！！！ (2020年9月13日 11時) (レス) id: 0b60fa6ccb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：パル | 作成日時：2020年9月5日 23時
