【２８２】side無し ページ42
誰一人欠ける事無く卒業を迎える事。それを願い、時間があれば作り続けていたぬいぐるみ達。その中には相澤やオールマイト、彼女が世話になったギャングオルカや他の大人達のものは無く、それが彼女が何を守り、何を斬り捨てるものであるかを物語る。
彼女は爆豪の言葉を思い出しながら「どんな顔をして、接すれば良いんだろうね……」と瞼を伏せた。
命に優先順位を付け、守りたいものだけを守り、その他は死が分かっていても、斬り捨てる選択を選び続ける自分が、一体どんな顔をして守りたい者達とヒーローを目指すのか。
こんなにも自分は弱かっただろうか。いや、元から強くなんて無かった。そう彼女は今までの長い旅路を朧気に振り返り、ベッドに倒れ込む。
初めて世界を巻き戻した彼女は、真っ先に彼の存在を確かめに向かい、個性発現直後の何も知らない非力な子供の姿で、焦がれ続けた彼と再会を果たした。だが、当然、彼には元の世界の記憶は無く、彼女と彼の始まりは小学校に入学してからだったという事もあり、突然自分の家に訪問して来た彼女に、彼や彼の家族は不思議そうに彼女を見詰めていたのだ。
彼女は泣きながら彼が生きている事を喜んだ。彼女が何故泣いているのかも、何故自分に会いに来たのかも分からない彼は、訳も分からず泣き続ける彼女をどうにか泣き止ませ様と必死になっていたという。
それから彼女は個性をひた隠しにしながら、元の世界でそうであった様に雄英へと入学を果たすが、過去は彼女の望まない方向へと形を変えていた。
命が失われる度に世界を巻き戻し、彼女の中でだけ、その全ての時間が息衝く。時を重ねる度、時を巻き戻す度、それは肥大するばかり───…
静かに流れる涙を拭いもせず、部屋に飾られた爆豪との離島に出掛けた際に撮った写真を見詰め「そっか……」と、何かに納得した様に僅かに笑みを零す。
「近過ぎたんだ……今までに無いくらい、皆と……勝己君と」
あの頃以上に。と、呟く様に言葉を続けた彼女は鼻の奥にﾂﾝｯ……と走る痛みに堪え切れず嗚咽を漏らす。自責の念が声を押し殺そうとするも、しゃくり声は静かに室内に響き、それすらも許し難いと自身に対する苛立ちを募らせる。
繰り返せば繰り返す程、思いは深く強く彼女の中に刻まれ続ける。彼女の中に息衝く、今まで繰り返してきた世界の思い出達は、彼女を立ち止まらせる事は無く、幾星霜を彷徨わせた。
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パル(プロフ) - Pandaさん» 前回に引き続き、今回でもｺﾒﾝﾄ有難う御座います！度々更新が遅れてしまうかも知れませんが頑張って更新します！応援、本当に有難う御座います！感謝感謝です！ (2020年9月13日 12時) (
レス) id: a050d7518b (このIDを非表示/違反報告)
Panda - 続編おめでとうございます！今後も応援してます!続きがめっっっっっちゃ楽しみです！！！ (2020年9月13日 11時) (レス) id: 0b60fa6ccb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：パル | 作成日時：2020年9月5日 23時
