【２７８】 ページ38
―――あれから数日が経ち、デク達が参加していたインターンの案件も片付いた様で、彼奴は暫くは肩の荷が下ろせると、やるせなく笑っていた。
彼奴は俺の提案を受け入れこそしたが、彼奴の願いそのものは何も変わっちゃいない。元の世界の連中が再びこの世界に訪れるよりも先に誰かが死ねば、彼奴は今まで通り世界を繰り返す。このまま元の世界の連中が訪れなかった場合も同様に、彼奴はこの世界を完成させると言い切ったのだ。
『次に世界を巻き戻す時は……君と関わらない。君に何も思い出させたりしない。誰にも話したりしない。私は……勝己君が生きる世界があれば、何度だって頑張れるの』
そう泣きながら笑った彼奴に、世界を完成させる事が彼奴の旅の終着点であり、その途中経過に過ぎない今を特別視している訳では無いと思い知る。それ故に彼奴は俺の提案に頷いたのだろう。例え、失敗したとしても繰り返す事で振り出しに戻れるのだから。
やるだけやってみれば良い。そう投げやり気味に言われている様な感覚に苛立ちを感じた事は言うまでも無く……だが、現状、元の世界の連中の出方に委ねている身で、上等だと息巻く事も出来ず、結局その話は保留となったのだ。
そもそも、彼奴には自己犠牲という考え方は無いにも等しい。あるのは、その身に負う傷が自分の受けるべき咎であるという自責の念のみ。彼奴は端から自分の為の幸せなど、願っちゃいねぇんだよ。
ただ、俺を生かす為に俺が死んだという事象を消す事。クラスの奴等が元の世界と同じ様に、誰一人欠ける事無く卒業を迎える事。それだけを願って世界を繰り返す。その為、自分の負う傷が浅くなる様にする俺の提案にも投げやりになる。
だが、彼奴が反対しなかった理由は恐らく、俺の気持ちを多少なりとも汲んだからなのだろう。
―――授業を終えた放課後の現在、寮から少し離れた場所にある、人気の無い木陰の中、木に背を預けて胡座をかく俺の膝の上には、彼奴の頭が乗せられている。猫の様に身体を小さく丸めながらあどけない顔を晒して寝ている彼奴は、余程眠りが深いのか、呼び掛けても肩を軽く揺すっても全く起きる気配は無い。
よく分からねぇが、彼奴曰く、今はそういう時期らしい。毎度世界を巻き戻した際、この時期になると異様に睡魔が押し寄せる様で、授業中も舟を漕いでは注意を受けていた。
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パル(プロフ) - Pandaさん» 前回に引き続き、今回でもｺﾒﾝﾄ有難う御座います！度々更新が遅れてしまうかも知れませんが頑張って更新します！応援、本当に有難う御座います！感謝感謝です！ (2020年9月13日 12時) (
レス) id: a050d7518b (このIDを非表示/違反報告)
Panda - 続編おめでとうございます！今後も応援してます!続きがめっっっっっちゃ楽しみです！！！ (2020年9月13日 11時) (レス) id: 0b60fa6ccb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：パル | 作成日時：2020年9月5日 23時
