【２７３】 ページ33
幸福な未来を思い描いた時、真っ先に頭に浮かぶのは彼奴の笑顔では無く、泣き顔だった。それは、俺がそう望んだ訳では無く、どんな結末を迎えたとしても変わる事の無い未来が、彼奴にとっての幸福とは掛け離れ過ぎていたからだ。
俺にも、彼奴にも……人並みの幸福を望む資格は無い。俺が生きる事、彼奴が俺を生かす事はつまり、常にその身の丈以上の死体の山を背負っているのと同じ事だ。
その死体の山に囲まれながら、俺達は贖い続けて行く事しか出来無い。築き上げられたそこから、無数の目が俺達に問い続けるのだろう。
責める様に、咎める様に、嘲笑う様に何度も何度も『幸せか？』と、俺達を呪い殺すまで───…
―――補講を終えて帰寮した時、いつもなら何処からとも無く現れて、俺の傍に顔を出す彼奴の姿が無い事に違和感を覚える。何度かその現場に遭遇している轟も似た様な事を思っていたのか「今日は時枝来ねぇんだな」と別段興味無さげに呟くと、ｽﾀｽﾀと自室へと戻って行く。
他者の目から見ても“そう”である様に、俺にとっても彼奴が傍に居るという事は当たり前の事で、それに意識を向けるか否かに問わず、そういうものなのだと感覚としてこの身体は覚えている。
だからだろう。こうして彼奴が傍に居ない事に意識を向けた時、杞憂とは思えない胸騒ぎが身の内に渦巻くのは。
ポケットから携帯を取り出し、何の通知も入っていないディスプレイを確認した際に自然と眉間に皺が寄ってしまう。
『出掛けとんのか』
たった一文。それだけを送り付け、自室に戻り、制服からラフな格好に着替えれば、ﾋﾟﾛﾝｯと携帯が通知を知らせ、表示された言葉に安堵する。
『百ちゃんとお出掛けしてるの。今帰ってるところだから、寂しくて泣かないようにね？』
茶目っ気溢れる言葉に「誰が泣くか！」と思わず出た言葉をそのまま送り付けると、彼奴はぽわぽわと花を散らす仔犬のスタンプが返ってきた。
何も無いなら、そんで良い。楽しそうにクラスの奴と遊んでるのなら、それは彼奴が望んだ幸せの一部なのだと受け入れられる。
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パル(プロフ) - Pandaさん» 前回に引き続き、今回でもｺﾒﾝﾄ有難う御座います！度々更新が遅れてしまうかも知れませんが頑張って更新します！応援、本当に有難う御座います！感謝感謝です！ (2020年9月13日 12時) (
レス) id: a050d7518b (このIDを非表示/違反報告)
Panda - 続編おめでとうございます！今後も応援してます!続きがめっっっっっちゃ楽しみです！！！ (2020年9月13日 11時) (レス) id: 0b60fa6ccb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：パル | 作成日時：2020年9月5日 23時
