【２７２】八百万side ページ32
泣き崩れる彼女を支えながら二人してその場に座り込み、抱き合う私達を緑谷さん達は何も言わずに見守っていてくれて、既に意識を手放している例の男性をスーツの人達へと引き渡す。そして……
「八百万さん、Aちゃんを頼むよ」
「ええ。勿論ですわ」
「Aちゃん、この人は僕達の世界でちゃんと法で捌いてもらう。例え、消えてしまう事になったとしても……かっちゃんは、あの世界で生きていたから」
「なぁ、ちゃん……っ」
顔を上げた彼女に優しく微笑んだ緑谷さんは「まだ、時間は掛かってしまうかも知れないけど、僕達も背負うよ」と告げる。
詳しくは分からない。だけど、既に爆豪さんが亡くなった世界が存在し、この世界で生きる爆豪さんを彼女が必死に守ろうとしている事が何を意味しているのか、それを緑谷さん達の前で口に出す事は出来無かったけれど、私は彼女がやろうとしている事の大きさを知ってしまった。
「背負って、残り僅かな時間を生きる。君に……ううん、君達に全てを託して」
「っ、なぁーちゃん……！！」
立ち去ろうとする緑谷さん達を呼び止めた彼女は、その重荷を受け止める様に胸の真ん中を強く掴み「恨んで……」と、涙を流しながら訴える。
「憎んで、良いから……許さなくて、良いの。こんな選択を迫った事、受け入れさせてしまった事、今まで築き上げたものを……奪ってしまう事全部、許さないで……っ」
彼女が一番、事の重大性を理解している。それ故に、受け入れ様とする緑谷さん達に自分を許さないでと泣くのだろう。
恐らく、その彼女の苦しみは彼女にしか分からない事なのだと思う。想像する事は出来ても、そんなものはきっと彼女が背負うもののほんの僅かで、全てを正しく理解する事は難しい。
「恨み続けるよ」
そう何処か晴れやかな表情を浮かべる緑谷さんは「君が……かっちゃんと幸せになってくれなくちゃ、恨むから」と、僅かに笑みを零し、他の皆さんと共に去って行ってしまう。
そんな緑谷さん達の背中を見詰めたまま、涙を流す彼女は先程の様に声を上げるでも無く、身の内に抑え込む様に、それこそ……全てを背負うかの様に泣き続けたのだ。
彼女の小さな身体を抱き締め、願う。どうか、どうか彼女がこの先の未来を、健やかに歩める様にと。最愛の爆豪さんと離れ離れになる様な未来など、彼女に与えないでほしいと、願い続けるのだった。
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パル(プロフ) - Pandaさん» 前回に引き続き、今回でもｺﾒﾝﾄ有難う御座います！度々更新が遅れてしまうかも知れませんが頑張って更新します！応援、本当に有難う御座います！感謝感謝です！ (2020年9月13日 12時) (
レス) id: a050d7518b (このIDを非表示/違反報告)
Panda - 続編おめでとうございます！今後も応援してます!続きがめっっっっっちゃ楽しみです！！！ (2020年9月13日 11時) (レス) id: 0b60fa6ccb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：パル | 作成日時：2020年9月5日 23時
