【270】八百万side ページ30
―――肌に突き刺さる殺気。狂乱に身を投じ、憎悪の全てを一人の男性に突き刺す彼女に、理解が追い付かない。ただ、彼女がその男性を殺してしまいたい程に憎んでいる事は確かで……止めなければ、私の知る彼女が失われてしまうと咄嗟に声を掛ける。
一斉に向けられる未来の緑谷さん達や、敵対していたと思われるスーツの人達、そして彼女の視線。口に出さずとも、私がこの場に居る事を問い掛けていて、震えそうになる身体に鞭を打ち、彼女へと近付く。
この日、彼女は朝から何だか様子が可笑しくて、いつも通りに振る舞って居たけれど、爆豪さんが彼女から視線を逸らした際、彼女は感情を消し去ったかの様に無表情だった。
何か良くない事が起こってしまうのではないか、彼女の身に何か良くない事が降り掛かってしまうのではないか。そう思い、補講へ向かう爆豪さんや轟さんを見送った彼女の後を尾行していたのだ。
「百、ちゃん……?」
「何を、していますの……」
此方を見ている様で、見ていない彼女の瞳に胸が押し潰されそうな気持ちになる。彼女達の話を聞いて、彼女が抱えてしまったものを知り、彼女が狂気に蝕まれる理由に……ただ、悲しくなる。
「もう、充分です。それ以上は……」
アナタがどれ程深く傷付き、どんなに苦しんだ事か。私は彼女の本来の時間を知らないぽっと出の存在に過ぎないけれど、それが想像を絶するものであった事だけは痛い程理解出来る。
壊れてしまった彼女を抱き締めると、彼女はまるで憑き物が落ちた様にその手から大鎌を滑り落とすと「どうして……」と、涙声で問い掛けてくる。
「大切だからですわ。アナタが私達を想ってくれる様に、私もアナタが大切ですの」
「っ、でも……!」
「ええ、事情は朧気には把握していますわ。アナタがそちらの方を亡き者にしたい程、憎んでいらっしゃる事も、その感情の捌け口がそこにか見い出せていない事も、分かっています」
「だったら……!」
「それでも!!殺してしまっては、この方と同じになってしまいますわ!!」
「っ……!」
殺されたから殺して、奪われたから奪って、それで一体何になると言うのか。彼女の苦しみも悲しみも、そうする事で多少なりとも報われるのだとしても、彼女の人生はこの先もずっと続いていく。
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パル(プロフ) - Pandaさん» 前回に引き続き、今回でもコメント有難う御座います!度々更新が遅れてしまうかも知れませんが頑張って更新します!応援、本当に有難う御座います!感謝感謝です! (2020年9月13日 12時) (レス) id: a050d7518b (このIDを非表示/違反報告)
Panda - 続編おめでとうございます!今後も応援してます!続きがめっっっっっちゃ楽しみです!!! (2020年9月13日 11時) (レス) id: 0b60fa6ccb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:パル | 作成日時:2020年9月5日 23時