【２４３】 ページ3
身構えこそするが、拒絶しない彼奴に「もう噛まねぇわ」と言えば、彼奴は「ホントに……？」と疑り深く視線を寄越してくる。いつの間にか、彼奴の涙も止まっていて、一時的なものだったとしても、止められたのならそれで良いと抱き締める。
「噛まねぇっつってんだろ」
「うぅ……痛かった。今も痛いです」
意地ける様にボヤく彼奴はｸﾞﾘｸﾞﾘと俺の胸板に額を押し当てて来ると、今度は俺の心音に耳を澄ませる様に心臓部分に耳を当て出す。
「……動いてる」
安堵する様に紡がれた言葉に「当たりめぇーだわ」と返すと、彼奴は仄かに笑みを浮かべ「勝己君……」と静かに名を呼ぶ。
「どうして、噛んだの……？」
改めて問われると、どう答えて良いのか言葉に迷う。ただ泣き止ませるにしても、普通は噛まねぇわな。と思いつつ、誤魔化す様に「知るか」と吐けば、彼奴は納得出来無いとでも言う様にうーうー唸り出す。
「良いからとっとと寝ろ」
「うぅ、誤魔化された。悲しいな、悲しいです。とても」
ｶﾘｶﾘｶﾘ……と、嫌がらせのつもりか、擽る様に俺の横腹を軽く掻き出す彼奴に「やめろ！」と声を上げると、彼奴は「しーっ。切島君に聞こえるから」と楽しそうに目を細める。
「テメェ……」
「ﾌﾌｯ、噛まれた仕返しです」
満足そうに顔を上げて笑う彼奴は俺の頬に軽く口を寄せると「はむっ」と挟む様に噛み付きやがる。
「……何やっとんだ」
「勝己君の真似」
「下らねぇ事やってねぇでさっさと寝ろ」
「まだ、寝たくないの」
さっきまで寝てやがった癖に何言っとんだ、此奴。
「噛むぞ、コラ」
「うぅ、噛まないって言ったのに」
「前言撤回だ」
結局、そんなやり取りを続けている間に夜は明け、朝方になってから漸く彼奴は眠りに着いた。時間を停め、世界と俺を繋ぎ止める様に絡められた指先に愛おしさなんてものを感じながら、このまま何もかも終わってしまえば良いと思ってしまう。
此奴を傷付けるもの、此奴を蝕むもの、此奴から全てを奪うもの。俺を含めた全てが消え去れば良いと……そう願うのだった。
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パル(プロフ) - Pandaさん» 前回に引き続き、今回でもｺﾒﾝﾄ有難う御座います！度々更新が遅れてしまうかも知れませんが頑張って更新します！応援、本当に有難う御座います！感謝感謝です！ (2020年9月13日 12時) (
レス) id: a050d7518b (このIDを非表示/違反報告)
Panda - 続編おめでとうございます！今後も応援してます!続きがめっっっっっちゃ楽しみです！！！ (2020年9月13日 11時) (レス) id: 0b60fa6ccb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：パル | 作成日時：2020年9月5日 23時
