【２４１】 ページ1
―――深夜2時過ぎ。
隣でﾓｿﾞﾓｿﾞと動く気配に気付き、薄らと目を開く。それと同時に耳を掠めたか細い嗚咽に、覚醒し切っていない頭で、これが夜泣きか……と冷静に首を横に向ける。
俺に背を向け、震える身体を丸く縮こませながら必死に声を殺す様に泣く彼奴は、苦しそうに嗚咽を響かせていた。
「……A」
そう名を呼べば、ﾋﾞｸｯと肩を跳ねさせ、恐る恐るといった様に身体を此方に向けた彼奴は、いつから泣いていたのか、涙でぐしょぐしょなった顔で俺を見ると、一層ﾎﾞﾛﾎﾞﾛと泣き始める。
そんな彼奴を抱き寄せ、まるでガキをあやす様に「我慢すんな」と軽く額をぶつけると、彼奴は「かつ、き……君……っ」と縋る様に俺の服を掴む。
「うぅ……ﾋｯｸｯ、ぁぅ……っ」
此奴の泣き顔に、以前までは確かに感じていた胸を抉られる様な痛みは今は感じず、それどころか、このまま思う存分好きに泣かせてやりたいと思ってしまう。
泣き喚いている訳でも無い為、隣の切島には聞こえてはいないだろうが、少しでも抑えられる様に頭から布団を被せ、親指の腹で涙を拭う。
「置いて、かないで……っ」
「……ああ」
「此処に、居て……っ」
紡がれた言葉が、まるで悲鳴の様で……苦しむ彼奴を強く抱き締めてやれば、無いにも等しい隙間を埋める様に更に身を強く寄せて来る。
「何処にも行かないで、傍に居て……っ」
言葉の一つ一つが抉る様に突き刺さる。守り切れなかった事への罪悪感と、此奴を置き去りにした自分への苛立ちと後悔。そして、それ等の出来事がトラウマとして今も尚此奴を苦しめ続けているという事実が、俺を容赦無く責め立てた。
とんだ呵責だ。当然の報いだと自嘲する。此奴を壊したのは俺で、苦しめたのも他でも無い俺自身だ。そんな俺が守るだの尽くすだの、滑稽以外の何物でも無い。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 233人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
パル(プロフ) - Pandaさん» 前回に引き続き、今回でもｺﾒﾝﾄ有難う御座います！度々更新が遅れてしまうかも知れませんが頑張って更新します！応援、本当に有難う御座います！感謝感謝です！ (2020年9月13日 12時) (
レス) id: a050d7518b (このIDを非表示/違反報告)
Panda - 続編おめでとうございます！今後も応援してます!続きがめっっっっっちゃ楽しみです！！！ (2020年9月13日 11時) (レス) id: 0b60fa6ccb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：パル | 作成日時：2020年9月5日 23時
