【９０】side無し ページ41
―――そして、勉強会が終わり、駅で切島と別れた二人はいつもの様に手を繋ぎながら地元へと帰って行く。電車に揺られながら爆豪の肩に頭を預ける彼女は「切島君、赤点回避出来ると良いな」と呟く。
「ケアレスミスさえしなけりゃ、いけんだろ」
「ﾌﾌｯ、凄く頑張ってたもんね。切島君」
「赤点なんか取ってみろ、ただじゃ置かねぇわ」
そう告げる爆豪に小さく笑った彼女は微睡みに浸る様に瞼を閉じる。自然と緩む彼女の手に気付いた爆豪はこのまま彼女が眠ってしまうのではないかと繋ぐ手に僅かに力を込めて握り返す。
「……クソ髪が言ってやがったあの言葉、ありゃ何だ」
起こすついでとばかりに静かに問い掛ける爆豪にゆっくりと瞼を開いた彼女は、考える様に間を置き「私にも、よく分からない」と言う。
「だけど、嬉しかった」
「……そーかよ」
「うん」
故意に隠しているのか、それとも爆豪が深く掘り下げないから何も言わないのか。彼女は自らその手の話をする事は少ない。爆豪が見る記憶や夢は一体何なのか、切島や他の生徒達が何故、彼女を初対面とは思えなかったのか。その理由を彼女だけは知っているのだろうと爆豪は彼女から目を逸らす。
身に覚えの無い彼女との思い出を見ると言った爆豪に対して、彼女はそれが爆豪が爆豪である事の証だと言う。その意味深な言葉の真意すら爆豪には分からず、ただ悶々としてしまう。
そんな爆豪を僅かに見上げた彼女は、緩く目を細めて笑みを浮かべると「いつか、勝己君と何処か遠くに行きたいな」と言う。
「誰も知らない場所で、二人でまったり過ごすの。誰の目も気にしないで、時間も忘れて……二人でずっと居られたら、きっと幸せだと思う」
爆豪の鼓動に耳を澄ます様に目を伏せた彼女は規則正しく波打つそれに安堵する様に微笑む。そんな彼女へと視線を戻した爆豪は「……具体的には」とﾎﾞｿｯと尋ねる。
「ド田舎でも、南の島でも、二人で過ごせるのなら……何処でも」
「考えといてやらァ」
彼女の願いは何処か儚げに聞こえ、爆豪は何が何でもそれを叶えてやると心に誓う。そしてその時、彼女の口から全てを聞ければ良いと───…そう思うのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 121人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
パル(プロフ) - 一寸先はダークさん» ｺﾒﾝﾄ有難う御座います!!凄いだなんてとんでもないです (汗)はい！頑張ります！今後ともよろしくお願い致します！！有難う御座いました！ (2020年3月24日 13時) (
レス) id: a050d7518b (このIDを非表示/違反報告)
一寸先はダーク - 何か、凄いですね！個性が何か分からんなぁ、何となく推測はして多分こうじゃないかな？みたいな所まではいったんですけど、まだまだ分かりませんね！これからも更新頑張って下さい！楽しみにしてます！ (2020年3月24日 11時) (レス) id: 94fd455da1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：パル | 作成日時：2020年3月17日 8時
