【８６】 ページ37
朝から何やっとんだと思わなくも無いが、辺りに人が居ない事を良い事にそのまま此奴を受け入れ様と目を閉じると、彼奴は俺の瞼を親指の腹で柔く撫でる。
「ﾌﾌｯ、しないよ……？」
「は？」
「だって、爆豪君の答えをまだ……聞いてないから」
さっきは問答無用で奪いやがった癖に、何を今更……と瞼を開き眉を顰めれば、此奴は「だから、言ってほしいの」と言う。
「今此処に居る爆豪君の口から、爆豪君の言葉で……聞かせてほしい」
「……」
その言葉の全てを推し量るには、今の俺には足りないものがあり過ぎた。此奴との繋がりが何を示すのか、どういう因果の元、此奴が俺を選んだのか。何故、手放したくないと思うのか……今しがた自覚した想いだけでは、全てが圧倒的に足りない。
それでも、今此奴を求めているのは他の誰でも無い俺自身だ。この先も此奴に笑顔がある様にと願うのも、傍に引き留めていたいと思うのも、此奴を泣かせたくないと胸が抉られんのも……全部、俺の感情だ。
自分でもつくづく馬鹿なんじゃねぇのかと思いながら、自ら此奴に口付ける。その時、不意に頭に浮かぶ光景に酷く懐かしさを覚え、今はそう過ごす事の出来無かった時間を後悔する様にあの日の言葉を紡ぎ出す。
「『一生テメェに尽くしてやらァ。そん代わり、テメェの全てを俺に寄越せ』」
此処では無い、何処か別の世界で俺が此奴へと告げた言葉。全てをくれてやるのと同時に此奴の存在の全てを俺が貰う。約束の様な、誓約の様な……そんな言葉だ。
切なげに眉を顰め、泣くのを必死に堪える様に唇を噛む此奴は「その言葉、ずっと……ずっと欲しかった……っ」と思いが強過ぎるあまり、声を掠れさせていた。
「うん……私はずっと、勝己君だけのものだよ。何があっても、ずっとずっと……変わる事なんて、絶対に有り得ない」
堪え切れずに零れ落ちた涙を拭い、そう笑った此奴は「行こう、勝己君」と俺の手を引いてそのまま走り出したのだった。
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パル(プロフ) - 一寸先はダークさん» ｺﾒﾝﾄ有難う御座います!!凄いだなんてとんでもないです (汗)はい！頑張ります！今後ともよろしくお願い致します！！有難う御座いました！ (2020年3月24日 13時) (
レス) id: a050d7518b (このIDを非表示/違反報告)
一寸先はダーク - 何か、凄いですね！個性が何か分からんなぁ、何となく推測はして多分こうじゃないかな？みたいな所まではいったんですけど、まだまだ分かりませんね！これからも更新頑張って下さい！楽しみにしてます！ (2020年3月24日 11時) (レス) id: 94fd455da1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：パル | 作成日時：2020年3月17日 8時
