【８４】 ページ35
不安。ああ、そうだ。これは此奴が得体の知れない何かに奪われてしまう事への恐怖からくる不安だ。ある日突然、その日がやって来るのではないかと脳裏にあの黒塗りの車が過ぎる。
大衆の目に触れた事でそれがより近付いたのではないか、良からぬ輩の目に彼奴の存在が止まってしまったのでないか。それこそが、この焦燥感の正体だった。
無意識に抱き締める腕に力を入れていた俺は応える様に抱き締め返す此奴に「何処にも行くな……」と限り無く本心に近い言葉を口にする。
「何かまた、思い出したのかな……？」
「分かんねぇンだよ……テメェの事も、何でこんな……どうしようも無く、テメェを何処にも行かせたくねぇって思っちまうのかも……！！」
分かんねぇンだよ……！！と自身に対する苛立ちを吐き出せば、彼奴は何も言わずに優しく微笑むとまるで息をする様に自然に俺の唇を奪った。その瞬間、辺りの喧騒の全てが消え去り、この世界に存在する生命体が自分達だけの様な……そんな錯覚に陥る。
俺はこの感触を知っている。感触、温度、匂い。此奴の全てを肯定し、受け入れているこの身体が、この心が此奴をこの上無い程に切望していた。
「……それは、君が君である事の証なの。私はそんな君が堪らなく愛しい。だから、ずっと傍に居たい……ううん、傍に居るの。何があっても何処までも、私は君の傍に居る事を諦めたりしない」
それが、私が此処に居る理由だから。そう目を細めて告げた彼奴はもう一度俺を抱き締めると「爆豪君も……いつか、そう思ってくれると嬉しいな」と言う。
此奴はいつかなんて、いつになるのか分かりもしない先の事の様に言うが、俺の心は既に決まっている様なものだった。
理由は分からねぇが、此奴を何処にも行かせたくねぇって思う気持ちは紛れも無く俺の本心だ。この能天気そうに見える此奴を手放したくないと……強く思ってしまう。
纏わり付いてくる此奴が今更何処かに行こうなんざ、はいそうですかって簡単に受け入れられる訳がねぇ。例え、訳分かんねぇ記憶が俺と此奴を繋いでいたとしても、此奴を手放したくねぇと思う気持ちは俺だけのもんだ。
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パル(プロフ) - 一寸先はダークさん» ｺﾒﾝﾄ有難う御座います!!凄いだなんてとんでもないです (汗)はい！頑張ります！今後ともよろしくお願い致します！！有難う御座いました！ (2020年3月24日 13時) (
レス) id: a050d7518b (このIDを非表示/違反報告)
一寸先はダーク - 何か、凄いですね！個性が何か分からんなぁ、何となく推測はして多分こうじゃないかな？みたいな所まではいったんですけど、まだまだ分かりませんね！これからも更新頑張って下さい！楽しみにしてます！ (2020年3月24日 11時) (レス) id: 94fd455da1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：パル | 作成日時：2020年3月17日 8時
