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一年で4箇所立ち上げる計算でも、今ある要請を片付けるには二年は掛かる。後の引き継ぎなどもあるだろう。此処なら山田君を私の後に据えれば問題無いが、それは私達が培ってきた時間が信頼するに値するものだからだ。
これから新設する情報特務課に知り合いなど居る筈も無く……課題は山積みだ。
それからいつも通りに仕事をこなし、定時に帰宅した私は彼が帰ってくる前に、食事を作り、パソコンと睨み合いながら募集要項の用紙を作成に当たる。
私が抜けた穴をカバーする為に総合班に新たにメンバーを加える必要がある。候補としては以前、募集を掛けた時に定員オーバーで切り捨てを余儀無くされた候補者達だ。
手紙を送った際に次回の募集についても匂わせていたので、連絡は取りやすいだろう。
「ただいま、A」
「え？あ…お帰りなさい、出久君」
「えと、仕事…？？」
作業に集中するあまり、彼が帰って来た事にも気付かなかった私は「お出迎え出来無くてごめん」と謝りながら、いつもの様に彼に抱き着きに行く。
「ううん、大丈夫。気にしないで？それより…えと、久し振りだね、家に仕事を持ち帰るのって…」
「仕事と言えば仕事なんだけど…君にも話さないといけない事があって、少し…余裕が無いかも知れない」
「ゆっくりで良いよ。ご飯食べながら話そう？」
「うん…」
いつもはテレビを付けながら他愛も無い話を交えて食べるのだが、彼は私が話を切り出すのを待っている様で、ストレートに言うべきか迷ってしまう。
「…出久君、実は…その……」
「うん」
「…転勤する事になりそうなの」
散々迷った挙句、これしか言葉が見付からず…驚く彼に申し訳無さを感じながら事の経緯を説明すると、彼は「えと、いつかはこの街に帰ってくるんだよね…？」と確認する様に聞いてくる。
「そのつもりだけど…戻って来たとしても、また同じ様な要請が来ると思うの。初期メンバーの人選は私自身が決めないと後々問題が起きた時に対応出来無くなる。勿論、一箇所に留まる事は出来無いからその後の増員は新しい特務課長に任せるつもりだよ」
そうなると、私は特務課長では居られなくなる訳で、新たな役職を国に申請しなければならなくなる。本当にやる事が山積み過ぎて頭が痛い。
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作者名：パル | 作成日時：2019年9月7日 15時
