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そして、案の定残業コースとなってしまった私と山田君は黙々と仕事を片付け、溜まりに溜まってしまった仕事を全て終わらせる頃には21時になっていた。
「はあー！！終わったぁー！！！」
「お疲れ様」
「いや、手伝ってもらって悪いな。ほら、緑谷来てんだろ？早く行ってやれって」
んでもって今日はオールナイトかませよ！と言う山田君に「仕事追加しようか…？」と言えば、山田君は「どうぞ、ゆっくり休まれて下さい。無音情報特務課長」と顔を引き攣らせる。
「家まで送るよ？」
「良いって、俺行きてーとこあるし」
「分かった。それじゃあ…お疲れ様。気を付けて帰ってね」
「おう！」
彼が待つ駐車場へと向かい、座席を倒して眠っている彼に「ごめん、遅くなった」と謝りながら車に乗り込めば、彼はゆっくりと目を開けて「お疲れ様、A」と柔らかく微笑む。
「出久君もお疲れ様。運転代わるよ」
「ううん、大丈夫」
身体を起こした彼は「今日は僕がご飯作るから君はゆっくりしてて」と車を走らせる。
「どうしたの？急に…」
「今日、現場でかっちゃんに会ってさ、Aが遅くなるって言ったら…残業の時くらいテメェが飯作れや！って怒られちゃって…」
「気にしなくて良いのに」
「いや、前々から作りたかったんだ。Aみたいに美味しいご飯は作れないかも知れないけど…」
そう申し訳無さそうに言う彼に、そう言えば彼が料理をしている所見た事無かったかも…とぼんやりと考え、その原因が彼がキッチンに立とうとする度に私が作るからなのかも知れないと何とも申し訳無く思ってしまう。
「因みに何を作る予定なの？」
「カツ丼！！お母さんがよく作ってくれてたから作り方は分かるよ！」
「それじゃあ、楽しみにしてる」
帰宅し、早速と言わんばかりにカツ丼を作り始めた彼をカウンターから眺め、自信無さげに言っていたのは何だったのだろうと思う程、完璧な仕上がりに「私のよりも美味しい…」と敗北感の様なものを感じたのは此処だけの話だ。
「えと…どう…？」
「美味しいよ。今度からカツ丼は出久君にお願いしても良い…？」
「うん！勿論だよ！！」
明日も食べたい…と思ってしまった私は、すっかり彼のカツ丼の虜になってしまった様で、気付けばあっという間に平らげてしまっていたのだった。
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作者名：パル | 作成日時：2019年9月7日 15時
