【ヒロアカ】Continue to love 3 (ページ16)

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初めて訪れる彼の職場に仕事とは言え僅かに緊張してしまう。彼曰く、事務所の社長や所属するヒーロー達は私が彼の恋人だと知っている…と言うよりも、先日の件で彼が話してしまった様で、事務所に入るなり受付の人に笑顔で社長室へと通される。

流石、大手と言う事もあり内装や事務所は広く綺麗で、秘書らしき女の人が「無音情報特務課長をお連れしました」と社長室へと入って行く。その後ろをついて行くと中には彼と社長と思しき人が居て、秘書の人は早々に部屋から出て行ったのだ。

「お初にお目に掛かります。情報特務課の無音といいます。この度はお招き頂き光栄です」
「はははっ！そう畏まらないでくれ。どうそ、無音情報特務課長、先ずは掛けてくれ」

堅苦しい人ではないのだろう。そう物腰柔らかにソファーへと座る様に促す社長に「失礼します」と腰掛ければ、何故か彼も隣に座ろうとして来るので気にせずに「先日はご迷惑をお掛けしまして申し訳御座いません。感謝しております」と本題に入る前に告げた。

「何、我々は職務を全うしたに過ぎない。情報特務課と言えど、我々ヒーローが人を救うのは義務であり、使命でもあるのだから」

何より、デクが長年お世話になっている相手だからね。と冗談混じりに言う社長に「社長…！」と恥ずかしそうに顔を赤らめる彼に笑いそうになるのを何とか表情筋を殺し、平静を装う。

「無音情報特務課長、今日来て頂いたのは“個人的”に情報特務課に応援要請を頼みたくてね、こういうやり方は如何なものかと思うが、君とデクの関係を足掛かりに直談判をしようと思っての事だ」

個人的にと言う事は他の事務所のヒーローとは共闘せず、この事務所のヒーロー達だけで片付けたい仕事があるのだろう。手柄を独占したいのか、或いは新人ヒーローへの経験を積ませる為の場を用意したいのか……何れにしろ、公私混同をするつもりは微塵も無い。

「個人的に応援要請を頼みたいと仰られていましたが、具体的な内容をお聞きするまで判断しかねます」

私にも立場がある。出来るだけ彼の手助けになりたいとは思うけれど、仕事に私情を挟む事で皆に迷惑を掛ける様な事だけはしたくない。例え、皆が了承してくれたとしても、それに甘えてしまった結果、皆を危険に晒す様な事に繋がるのなら、私は上司として部下を守る選択を選ぶだろう。

何より、此処に居る私は情報特務課の無音Aであり、彼の恋人の私では無い。それは彼にも言える事だ。