縺斐♀ ページ15
記憶喪失にでもなったのかと思いましたよ。そう嫌味を一つ溢してからラズベリーリーフティーをくいと飲み干した。彼も何か言いたそうにこちらを見ていたが、押し黙ってカモミールティーを流し込んだ。言いたいことがあるなら、いつもみたいに言えばいいのに。どちらも言葉を発すことはなく、また沈黙が訪れた。
空になったカップを両手で持って、内側に描かれた柄を改めて鑑賞する。ほんのりと手のひらに熱が伝わる。彼女はお茶が好きだが、家にこういったものはなかった。結婚記念……は改めて買うにしても、入籍の記念になるようなプレゼントを買って帰るのもいいかもしれない。品川駅付近にはおしゃれな雑貨屋も多いし、この店で売られている茶葉と一緒に贈ったら喜んでくれるだろう、と計算する。
そうだ。明日、市役所から帰ってきたら彼女をお茶に誘おう。彼女にお茶を淹れてもらって、僕はクッキーでも焼いて、新しいティーカップでお茶会をして。そうしたら、将来のこと、どこに暮らしたいとか、子供は何人ほしいとか、これからのことを二人で話し合いましょう。明るい、未来のことを。
そんな幸せな想像をしたら、先ほどまでまとわりついていた不満の感情も晴れてしまった。僕は話を続ける。
「それで、式をする際は君に友人代表スピーチをお願いするかもしれないです。僕とAさんの共通の友人って君くらいですし。それから」
「ねえ、さっきから君は、何を言ってるの」
彼が、そう遮った。無理矢理落ち着かせたような声色。その表情には明らかに困惑、動揺が滲んでおり、どことなく顔色が悪いようにも見える。彼がどうしてそんな表情をしているのか理解できない僕は「何って……」と返答に詰まる。
だって、何について問われているのかわからなかった。何を言ってると尋ねられても、一年半前に婚約した彼女に二度目のプロポーズをして、明日籍を入れることになったとか、結婚式には友人代表としてスピーチを頼みたいとか、ごく自然なことしか話していない。自分の話に論理の矛盾も飛躍も見当たらない。ならば彼は何を問うているのでしょうとその表情を観察しても、やはり僕には理解できなかった。そんな僕の様子を見てか、彼はまた困惑の色を深める。おかしいのは君だ。そう言われているような。
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繪棲(プロフ) - す、素敵…！！落ち着いた優しい雰囲気の世界が急にひっくり返って…頭が打たれたような感覚になりました。凄く好きです…！！ (2021年11月24日 0時) (
レス) @page17 id: 222d8aed0b (このIDを非表示/違反報告)
上鳴忠(プロフ) - ループ物語ですか！？うっわ…最高すぎました… (2021年11月20日 11時) (レス) id: b231fac804 (このIDを非表示/違反報告)
上鳴忠(プロフ) - わー！最近イナイレの作品が少なくなってて更に推しのやつも変わってないなーと思ってたら！ (2021年11月20日 7時) (レス) id: b231fac804 (このIDを非表示/違反報告)
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