第百三十六話 愛おしい君 ページ50
デント SIDE
夕飯を終え、皆
寝袋を準備している中
Aちゃんの様子が少し変に感じる
いつもよりボーッとしている様に見える
…どうしたんだろう
最近は風邪や体調不良で倒れたりすると
頼って甘えてくれるようにはなったが
やはりまだ、迷惑を
かけたくない気持ちが大きいのか
限界まで一人で抱え込んで我慢するところがある
…どこか、具合が悪いのだろうか
心配だが…今聞くよりも
サトシやアイリスが寝た頃のほうがいいか
二人きりのほうが、
気を使わずに言いやすいかもしれない
そう思い寝静まる頃合いを狙うことにした
そして、明かりを消して
寝息が聞こえ始めた頃
サトシたちを起こさないように起き上がると
少し遅れてAちゃんが起き上がった
やっぱり具合が悪いのか…？
そう考えていると
Aちゃんはゆっくりと静かに立ち上がり
僕の元へとやってくると
座り込み僕の胸に頭をグリグリと擦り付ける
えっ…と？
具合が悪いサイン…なのか…？
『…き』
デント「え？」
『…好き』
デント「…え、ぇ？！」
よくわからない行動から
まさかの言葉に二人が寝ているのにも関わらず
大きな声が出てしまって慌てて、手で口を塞ぐ
幸いなことに二人は深い眠りに
ついているようで起きてくることはなかった
ホッとしたのも束の間
Aちゃんの言葉を改めて理解し
顔が沸騰したかのように熱くなる
『…優し…くて、熱しやすくて…
…人懐っこい…笑顔が…好き…
たまに…ちょっと暴走するけど…
そこも…っ…き、嫌いじゃ、ない…』
胸に頭をグリグリしながら
途切れ途切れ口にするAちゃんの言葉に
顔も耳も胸も熱くて熱くてたまらない
でもそれがとても心地よい
…
嬉しいんだ
普段聞けない事だからこそ
嬉しくて…どこか気恥ずかしいんだ
『ぃ…以上…だ』
そう言うと頭を離し、トマトのように
真っ赤になった顔を上げるとゆっくり立ち上がり
僕に背を向けた
…
【ボフッ】
『ッ…』
デント「ダメ…そんな
可愛いことされたら帰すわけにはいかない」
自分の寝袋へと帰ろうとするAちゃんの
手を引き寝袋の中へと引きずりこみ
小さくて柔らかい体に腕を回す
恥ずかしながらも、顔を真っ赤にして
一生懸命言葉にしたのがわかると
なんとも愛おしくてたまらない
デント「僕も大好きだ
甘え下手な所も…全部大好きだ」
この日、この時
初めて僕は彼女の赤い頬にキスをした
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作者名：ラム酒 | 作成日時：2022年9月26日 3時
