第百二十三話 寂しくてあったかい ページ37
A SIDE
【ボフッ】
『つらい…きもちわるい…はきそう…』
デントたちをなんとか見送り
フラフラしながらもなんとか部屋にたどり着くと
倒れるようにベッドに寝転んだ
皆には悪いが、デントの言うことを聞いて
こうしてここに残ったのは正解だった
まさかこうも、身体が言うことを聞かないとは…
フシデから逃げるとき
走ったのが良くなかったのだろう
薬が完全に効いてない状態で
あーも激しく動いたから
毒のまわりが早まったんだ
『…』
頬が熱い
でも身体は寒い気がする
掛け布団をかけようと
下の布団を掴もうとするが
もう力が入らない
『るかりお…』
ルカリオに手伝ってもらおうと
モンスターボールにてを伸ばそうとするが
手を伸ばすことさえもう苦痛だった
『…』
外はあれだけ騒がしいのに
部屋の中には話し声も生活音もない
ただ自分の荒い呼吸が聞こえるだけ
…なんでだろうな
昔は一人で部屋にいるのなんて
何も感じなかったのに
今は何故か…
少しだけ寂しい
…
…
…
…
…
『…』
目が覚めると、下に引いていたはずの
掛け布団が上にかけてあり
額には程よく濡れたタオルが乗っていた
そして少ししてから
右手があたたかいことに気がついた
ふと、右側を見てみると
こちらを見つめ優しく微笑むデントがいた
そしてよく見ると
大きな手で私の手をぎゅっと握っている
デント「気分はどうだい？」
『…さっきよりは…ラクかな』
デント「安静にしてたから
ちゃんと薬が効いてきたんだね
良かった」
デントは安心したようにそう言うと
私の頬を優しく撫でる
くすぐったいが不思議と嫌ではない
寧ろ、寂しさすら感じなくなっていた
『…フシデは…？』
デント「アーティーさんが
頑張ってくれたお陰でなんとか収まったよ」
『…そっか、良かった』
まぁそうだろう
言ってしまえばあの人は
虫タイプのスペシャリストみたいなものだ
彼がいれば私が居なくともなんともないだろう
『…デントもお疲れ』
デント「僕は大したことしてないよ
それより、なにか食べたいものはある？」
…食べたいもの、か
『…お腹すいない』
デント「そっか」
『でも…』
デント「でも？」
『…もう少し…ここにいて…？』
デント「！…
もちろん、いいとも」
私の我儘にデントは嫌な顔もせず
そう返すと嬉しそうに、にっこりと笑った
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作者名：ラム酒 | 作成日時：2022年9月26日 3時
