第百十三話 ただいま ページ27
No SIDE
デント「それは…その
怒りで前が見えなくなった君を見るのは…
嫌だな…って」
『…』
デント「…あの時のAちゃん
目がさ…出会ったときよりも悲しそうで…
辛そうだった」
『…辛そう、か』
デント「…うん、僕にはそう見えた」
そう伝えるとAが膝から顔を出すと
ずっと隣で話しかけていたデントと目があった
目をそらそうとすると
ぽんっと大きな手でAの頭を優しく撫でた
デント「誰かのために怒って
立ち向かえるって素敵なことだと思うし
それが君の優しい良いところなのも知ってる
…今回は
…そうだな
少し、やり過ぎちゃったんだよ」
『…』
デントの言葉を否定も肯定もせず
ただ静かに撫でられ続けた
デント「…そろそろ戻ろうか」
『…』
コクリと小さく頷くと
デントは優しく微笑み立ち上がると、
座っているAに手を差し伸べる
少し間を空けてから
差し出された手を取り立ち上がった
繋いだ手は立ち上がっても離さず
デントが指を絡める
いつもなら顔を真っ赤にして怒り出すのだが
今日は怒り出すことも振り払うこともなく
ぎゅっと優しく握り返した
そんな様子を見ていたルカリオは
安心したように微笑むと
道を案内するかのように
二人の前を少しゆっくり歩き始めた
それに気づき、二人も後を追うように
ゆっくりと歩き始めた
デント「…」
『…』
木々が立ち並ぶ林の中
二人が会話を交わすことはなく
風に揺れ、葉のかす合う音
落ち葉の上を歩く足音だけが聞こえてくる
沈黙の中
初めに口を開いたのは
『…ごめん』
デント「！」
Aだった
顔はうつむき声は小さかったが
デントの耳にはしっかり届いていた
『あと…止めてくれて…ありがとう』
あの時
デントが止めに入らなければ
恐らく、最悪な結果になっていただろう
感情が昂り、あんな態度を取ってしまったが
A自身、止めに入った
デントに対して感謝していた
そのことに対して礼を口にすると
デントは驚き
目を見開くがすぐに穏やかな表情に変わった
アイリス「っ良かった！！帰ってきた！！
Aー！！」
サトシ「おーい！！」
林を抜けた先には
笑顔で手をふるサトシとアイリス
あんなことがあっても嫌な顔もせず
Aの無事に喜んでいる事に
少し戸惑いながらも
デントに優しく手を引かれ
仲間の元へと帰っていった
『…ごめんね、ただいま』
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作者名：ラム酒 | 作成日時：2022年9月26日 3時
