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コートのボタンをかけ、マフラーも巻かないまま彼女は玄関へと歩いていく。
「あ、あのさ。今日は楽しかったよ、ありがとね」
彼女が一線を引いている理由はまだわからない。同時に、それはきっと、自分も彼女も恋人同士になりきれていないことの証左だろう。結局のところ、臆病者はお互い様なのだ。
なら、自分がAを傷付けないようにして、一歩踏み出す以外ないじゃないか。
「......A」
空いていたAの左手を引き寄せ、そのまま抱きしめる。
「...！？ え、ど、どうしたの、急に。こんな、こと」
「自分、少しは恋人っぽいことしたかってん。だから、許してや」
強すぎない程度に抱きしめていると、彼女もおずおずと自分の背中に手を回してきた。そして一言、ごめん、と弱々しい声を漏らした。
「...なんか変に距離置いちゃってたし、ロボロ君も感じてたよね、多分」
「ええですよ、それぐらい。少しずつ近づいていければいいかなって思うし」
こんなことを言っているが、自分の心臓は忙しなく鼓動し続けている。顔も真っ赤になっているだろうし、見せられたものではないだろう。それでも、後に続くことに関しては、目を合わせて話す必要があると思ったのだ。
Aさんを抱きしめていた腕を少し緩め、俺はAさんと目を合わせた。
「ただ、次からは君付けじゃなくて呼び捨てで呼んでほしいんよ。自分も敬語なしで、名前呼びで話すから。
ええやろ、A」
彼女の名前を呼び捨てで言った瞬間、Aの身体はぴくりと震えた。
「......っ、う、わかった。...ロボロ」
その時の、ちょっと蕩けた瞳と赤くなっている頬がものすごく愛しくて。大事にしたいという気持ちと離したくないという気持ちで心が締め付けられた。
その瞬間、これまで抑圧されてきた諸々が、ついに抑えきれなくなる。
ごめんな、と呟いて、返答すら待たずAに口付ける。彼女の華奢な肩が揺れるのも構わずに。
夜と深夜の境界線すら溶けるほどの、キスをしてしまった。
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夢喰病 - 一話一話本当に素敵です…！私もこんな文才が欲しかった…(小声) 最後まで楽しく読ませて戴きました！最高の短編集をありがとうございましたm(_ _)m (2020年3月23日 10時) (
レス) id: 582bb38728 (このIDを非表示/違反報告)
みみ - ショッピくんの「寝たい」の続編まってます！ (2019年10月13日 6時) (レス) id: e38fcc759c (このIDを非表示/違反報告)
蝋 - ん”ん”ん”好きです。(唐突) 表現が素晴らしいです…! 更新待ってます！ (2019年9月12日 1時) (レス) id: a160d0e24d (このIDを非表示/違反報告)
栄養失調 - 割と本気で語彙を下さい……えぇ……素晴らしい作品を見つけてしまった……更新頑張ってください！！めっっっちゃ応援してます！！！ (2019年9月3日 21時) (レス) id: 3967b4b60c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ギスギスしない夢女達 x他4人 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/tantanmen1/
作成日時：2019年8月31日 16時
