明日へ/Δ ページ5
「……」
「……」
私達はお互いに黙り込んだまま倉庫の前に立っていた。
倉庫の扉は先程スージィが殴り付けたせいで少し傷が付いていた。
何と声を掛ければいいか。
それを考えてどれだけの時間が経過したか分からない。
その間ずっと隣の彼女は倉庫に額をつけて項垂れるように床を見ていた。
「なぁ。」
彼女が呼びかけてくる。
「あれ、やっぱ夢だったのかな。」
チャリ、とスージィの手の中にある倉庫の鍵が音を立てる。
私は無理矢理口角を上げて無理矢理喉から声を絞り出した。
「そんなわけない！私達があの場所でラルセイやランサー達と過ごした時間は紛れもなく本物だよ！」
なんと薄っぺらい言葉だろうか。
何故もっと上手い言葉が出てこないのだろうか。
あの冒険で、私は自分が少しでも強くなれたと自信を得たはずだった。
何もできない弱虫なままの自分から脱することができたのだと。
ところがどうだろう。
実際は、何も変わっていなかったのだ。
それでも、そんなどうしようもない私の言葉でも、スージィは少し笑ってそうだよな、と言ってくれた。
「一回駄目だったからって何弱気になってんだろうな。らしくなかったわ！また明日も来てみようぜ！今度はクリスも一緒にな！」
にか、と明るく笑って、私の心を見透かしたかのようにスージィがぐしゃぐしゃと私の頭を撫でて言った。
私はスージィを見上げて力強く頷いた。
彼女は本当にすごい人だ。私も、彼女のように強くなりたい。
「んじゃまぁ、これ返してくっか。」
職員室から盗ってきた倉庫の鍵を投げてキャッチしながら笑い歩き出したスージィの後に続く。
明日は、きっと。今日学校に来なかったクリスも一緒にここにくるね。
3人一緒なら、きっと、いや絶対に、また皆に会えるよね。
一瞬、冷たい風が倉庫の方から流れてきたような気がした。
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作者名：その辺の人間 | 作成日時：2019年2月19日 0時
