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無(自覚)個性のお話 3/MHA ページ20

「やっぱりかっちゃんの個性はすごいなあ。」

「ねー。」

少し離れたところでぱちぱち、と火花を散らしながら手の平から音を立てているかっちゃんを見ながらそう呟いた出久に相槌を打つ。
かっちゃんくんの周囲には人だかりができていて、わあすごい！と歓声が上がっていた。
その中心で誇らしげに胸を張っているかっちゃんは本当に可愛い。

「ぼくたちもはやく個性、つかってみたいね！」

「うん！」

彼が無個性であることを知ってしまっている私としてはかなり複雑な心境ではあるが、取り敢えず頷く。
でもそういえば、どこか他人事のように周囲が個性を発現させている様を見ていたが、私にも個性というものが出てくるのかもしれない。
一体何の個性だろう…？

私も隣の出久のようにわくわくしてきて、二人で理想の個性についてあれこれやと話し合った。
そういえば、最初は彼らのことを爆豪くんだの緑谷くんだのと呼んでいたが、幼稚園生活を送っているうちに出久、かっちゃん呼びが定着してきた。
流石に園児が苗字呼びしてたら違和感の塊だろうし、最初は恐れ多すぎてどうかなりそうだったが慣れてきてよかった。
いやまあ、本人の前でかっちゃん呼びは片手で数える程しかしたことがないんだけど。

「ぼくね！オールマイトみたいになりたい！」

すまーーっしゅ！とキラッキラに目を輝かせて拳を前に突き出す出久。
見て下さいこの天使。いっそ母親目線で頷いて、なれるといいねと言っておいた。

「っA！」

「へ？」

どこからか大声で名前を呼ばれて間の抜けた声が口から零れた。
声が聞こえてきた方へ顔を向けると、顔の真横をものすごい勢いで何かが通り過ぎていった。
反対側の隣に立っていた出久も何が起こったか分からなかったみたいできょとんとしている。
少し離れたところにいたかっちゃんが目を見開いて驚いたような表情をしている園児達を置き去りにして、駆け寄ってきているのが目に入る。

「おい！だいじょうぶか！？」

焦ったような表情をして私の肩を掴んだかっちゃんにわけも分からず、うん、と頷く。
私の気の抜けた顔を見たかっちゃんが、酷く安心したような顔になって肩の力を抜いた。

そこで漸く時が動き出したかのように、皆がこっちに駆け寄ってきた。
中には先生もいて、よかった！と声を上げている。

状況がいまいち飲み込めない呑気な私は、自分の手を見つめて何か考え込んでいる様子のかっちゃんを横目に、欠伸が一つ、零れた。

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