おにごっこ 3/Sans-地下御伽噺 ページ13
「でもそっか‥それならよかった。」
てっきり嫌いだから私のことを避けているのかと思っていたから本当に良かった。
それならきっと、やっぱり私の気持ちに気が付いて彼は避けていたのだ。
Sansは優しいから、面と向かって言わずにやんわりと私の気持ちを拒絶してくれているのだ。
それならば、この気持ちは胸の奥深くにしまって、これまでと同じようにSansとは友達でいよう。
暫くの間は大変かもしれないけれど、きっとそのうちそれが当たり前のことになって、辛い事なんて何もなくなるだろう。
「ありがとう、Sans。時間とらせちゃってごめんね、もう行っていいよ。」
すると目の前のSansが拍子抜けしたようにこちらを見てきた。
「‥話はそれだけなのか？」
「うん。」
「‥‥本当に？」
「うん。」
じゃあね。
そうSansに手を振ってその場を離れようとすると、今度はSansが私の腕を掴んで引き留めた。
紙コップが音を立てて落ち、中の水が零れているのが視界の端に映った。
驚いてSansの方を見ると、Sansは少し気まずそうに視線を下げた後、しっかりと私の目を見て言った。
「なら、俺の話も聞いてくれないか。」
狡い人だな、と思った。
それでもやっぱり、引き留めてくれた彼に喜んでいる自分がいて。
さっき辛い事なんて何もなくなるって言ったけど、そんなの嘘だ。
絶対に、一生私は彼を想って苦しみ続けるんだ。
もう、それ程に彼に惚れこんでしまっている。
「ごめん。餓鬼みたいなことして。」
自嘲じみた笑みを零して、ぽつりとSansが言う。
首を横に振って私は平気だから、ということを伝える前に、掴まれていた腕を引かれ言葉を飲み込んだ。
「Sa、Sans？」
何故か、Sansの腕の中にいる。
その事実に周囲の熱気に負けない程顔が熱くなるのが分かった。
「‥あー‥‥こういうことだから、‥あんまり変に思い詰めないでくれ。」
最後に唇に触れた固い感触。
それと同時にフッと目の前から彼が消えて、へたりとその場に崩れる。
「A！！悪い！！！Sansに逃げられ‥‥A？」
Undyneが駆け寄ってきたけれど、それに応える余裕は全くなかった。
すぐ近くの先程紙コップから零れた水が、じわじわと蒸発して消えていく様をただただぼんやりと見つめた。
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作者名：その辺の人間 | 作成日時：2019年2月19日 0時
