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「Aちゃ、…」
ひょこっと飛び出してきたヒチョル先輩の爽やかな顔が一瞬にして崩れ去る
「あれ？先輩何してるんすか？(^^)」
怖いくらい完璧な笑顔でそう尋ねるベクにヒチョル先輩はたじたじ
「あ、あぁ…ベク。今から帰ろっかなと思って…
そ、それじゃバイバイ！」
さっきまでの余裕はどこへやら、ひぃーって言いながら逃げ帰ってしまった
その後ろ姿にべーっと舌を出してから
さて、とベクがこちらを向く
ありがとう
そう言うつもりだったのに、私の頭を撫でて先に発せられたベクの言葉で腹の奥底に沈んだ
「良かったじゃん！“女の子”になったらさっそく男が寄ってきて」
ガツンと石か何かで頭を殴られた気分だ
あまりにも嬉しそうに言うベクに言葉が出ない
「でもまあさすがにヒチョル先輩はお勧めしないから追っ払ったけどね」
じゃあヒチョル先輩じゃなかったらベクは見逃してたの？
なんだよそれ…
ベクは親友や親のような目線で私に男が寄ってきたのを喜んでいるのかもしれないけど
その笑顔は私にとってこれ以上ないってほど残酷だった
「つーか本当に嫌だったら…っておい！A？」
「先帰る」
「ちょっ、おま、待ってろよ！」
デカい声でそれだけ言って猛ダッシュで自分のクラスの下駄箱へ向かうベク
その間に私は帰ってしまおうと思ったのだけど、ベクは思ってた以上に早くて、
ちょうど昇降口の前辺りで遭遇してしまった
「ゼェハァ……俺の…勝ち…ゼェ」
「ﾁｯ…」
「ﾁｯて……なにキレてんだよ」
スタスタ歩く私の前をベクが後ろ向きになって私の方向いて歩く
「キレてない」
「じゃあなんで舌打ちすんだよ」
「してない」
「しただろ！
…何なんだよ。人がせっかく助けてやったっていうのにお礼の一つも言わないで舌打ちとか。お前失礼にもほどがあんだろ」
「別に助けてなんて言ってない」
「いーや目が言ってたね」
「どうしてそんなの分かんの？」
「んなの俺はAのしん…
「あーもー！うっざいなぁ！！！」
その先を言わせたくなくて、思わず叫んだ
「ベクこそ何なんだよ！
“浮気かこら”だって？笑わせんな。
浮気なんて初めからそんなのないじゃん。アンタには私の恋愛に口出す権限ないんだから。
彼氏じゃないくせに私の邪魔すんな！！」
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作者名：ウサン | 作成日時：2016年8月8日 8時
