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指差したのはぼろっぼろのアパート
「俺んちそこ」
「え、」
ハードルが下がるにも下がりすぎでしょ！？
「びっくりした？こんなおんぼろで。でも俺一人暮らししてるからさ今のバイト代じゃこんな所しかなかったんだよね」
「へぇ〜バイトし……え、一人暮らしなの！？」
バイトもなかなか衝撃だったけど、一人暮らしはその上だ
「だってこんな性癖、親に言えるかよ」
あーそれは確かに(^^;)
「だから高校進学を機に親に土下座して頼み込んだわけ」
「はーぁ」
ベクもいろいろ苦労してんだな
ベクは手に持った鍵をくるくると回しながらおんぼろアパートの、もちろんおんぼろな階段を上る
足を掛けるごとにギシッと音がするから壊れるんじゃないかと肝を冷やす
ベクの部屋は二階の階段から一番遠い部屋
部屋を前にして、さっきまで何とも思っていなかったのに男の家に泊まることを今更ながらに感じ、緊張が高まる
鍵穴に鍵が差し込まれたときなんかはもう爆発しちゃうんじゃないかとさえ思った
「お邪魔します…」
「どーぞー」
と言われたものの
玄関には靴が脱ぎ捨てられていて足の踏み場なんてなかったからちょっと戸惑う
「あ、もうバンバン踏んじゃって良いから」
ベクが声をかけてくれたけど、そういうわけにもいかないしなぁ、と苦肉の策でつま先立ちをして、心の中で靴に謝りながら中に入った
居間はコンビニの袋や積み重なった衣服だらけ
やっぱり男一人だとこうなるものなのだろうか
でも私も人のこと言えない……
お母さんがいなかったら今頃廃人と化してそうだなと思うと、母のありがたみを感じた
「そういえば親に電話しなくていいのか？」
コンビニで買ったご飯を食べ終え、お風呂が沸くのを待ちながら二人でテレビを見ているときにベクが言ってきた
「あ！そうだった！」
結局電話かけずじまいだったし、さすがにもう連絡するべきだよね
「俺風呂入ってくるから」
気を遣ってくれたのかベクは浴室へと消え、
シャワーの音とそれに混じって時折鼻歌も聞こえてきた
しばらく耳を傾けると、そのあまりの美声に感嘆の声が漏れる
ベクって歌うまいんだなあ
でもちょっと静かにしてもらいたい
本当に気を遣う気あんのか？
疑問に思いながら一応感謝して、携帯を取った
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作者名：ウサン | 作成日時：2016年8月8日 8時
