8-7 訂正 ページ19
うちの家族はみんなアクティブな乗り物が好きだったから、記憶にある限り観覧車は初めて乗る
ゆっくりと動く不安定な個室に足を踏み入れると、グラグラ揺れるから思わず足を戻してしまう
「A、行っちゃうから早く入って」
「あ、うん」
ベクに急かされて勢いで入ったら、中はそんなに不安定さを感じない
続けて入ってきたベクは私の向かい側に座った
「私観覧車初めて」
「マジ？」
「で思ったんだけどさ
これのどこが楽しいの？」
さっきから全く進んでる気しないし、今のところ外の景色が良いとかもないからつまらない
「まあまあ。もうちょっとすれば分かっからそれまで我慢しろって」
「ふーん。てか話し方いいの？」
今日は珍しくだいぶ最初の方からボロが出てたけど、観覧車に乗った途端、まるっきり男に戻ってる
「別に良いだろ。俺とお前しかいないんだし。この喋り方疲れんだよ」
ガバッと盛大に足を開いてリラックスした体勢をとったベク
俺とお前だけか…
そう思ったら急にあの日のことを思い出して、恥ずかしくなってきた
ヤバい、今絶対顔赤いって！！
見られないように、外を向いて頬杖をついて顔を隠すと
ベクが腕を伸ばして私の手首に触れた
「大丈夫か？」
「うわっ、なに！？」
「なんか喋んなくなったから気分悪いのかと思って」
むしろいきなりそんなことされた方が心臓に悪い
「超元気だけど？
ったくしょうがないなぁ。そんなにベク子が私とお喋りしたいなら話してあげよう」
「上から目線(笑)」
「んー何がいいかね……そうだ！私バイト始めんの！」
「おお！！どこで？」
「秘密」
教えたら仕事してる姿見にくるだろうし、絶対笑われるから
「んー、大工とか？」
「私のイメージで勝手に決めただろ(笑)」
ツッコんだらベクはにへへって笑ったから絶対そうだ
「コンビニ…はなさそう。あっ、１００均？」
当たってるけど教えない
さあ？と首を傾げたら
“ケチ”って声が聞こえたけどスルーしてあげよう
「なんで始めたの？」
「お母さんに、家でぐーたらしてんならバイトでもして金稼いでこい！って言われて
まあ最近お金も減ってきたし、やろっかな〜みたいな？」
「母からの威圧ね。お前らしいな(笑)」
ベクの思う私らしさって何だよ(笑)
「いつから？」
「冬休み始まってからかな」
「じゃあ冬休み遊ぶ時間減るのか」
呟くように言ったベクの言葉を私は聞き逃さなかった
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作者名：ウサン | 作成日時：2016年8月8日 8時
