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私にバイトをしろ！と言った直後、お母さんは知り合いで100均の店長をしている人にすぐさま電話をして
翌日、形だけの面接でさらっと採用された
「いや〜この前ちょうど一人辞めちゃって人手不足だったから助かったよ〜。それにチェさんとこの娘さんじゃもう安心安心！頼んだよ！」
帰り際、店長(かっぷくの良いおじさん)になぜかものすごく期待されてしまい、曖昧な返事を返す
外でどんな良い人演じてんだかうちの母親は…
昇降口でベクを待つ今日は火曜日
一緒に帰る、というか顔を合わせること自体十日ぶりだ
どんな顔をして会えばいいんだろう
いつも通りにすればいいのかな
でもいつも通りってどんなのだったっけ？
バッコン…バッコン…
ベク病が発病したからうるさくて何にも考えられない
ない知恵を絞り出し、笑顔を作れば間違いないという確信の下、ギチギチに固まった表情筋を無理に動かす
でもベク病のせいで思うように行かなくて、まずは筋肉を緩めようと口を動かしていると
「なに一人で変顔してんだよ」
その声を聞いて、せっかく緩めた筋肉は再び強ばった
ﾊﾞｯｺﾝﾊﾞｯｺﾝﾊﾞｯｺﾝ…
いつにも増してヒドく鳴る胸の音
思考も停止し、何も言葉が出てこなくて
ただ見つめるだけしかできない
ベク病にかかって以来、最悪の症状だ
「髪結んだんだ。一瞬気づかなかった」
ベクが手を伸ばして、申し訳ない程度にちょこんと結んだ髪に触れる
夏休み頃から伸ばし始めた髪は肩を少し過ぎるくらいに伸びていた
「あ、うん……」
ぎこちない返答を変に思われてないか不安になる
だけどベクは何とも思ってないようで、それじゃ帰るか、と靴を履き替えた
そっか……
やっぱりベクにとって、あんなの大したことじゃないのか
良かった
……のかな。
他愛のない話をして無言になったときだ
“あのさ”と言って間を置いてからベクが提案してきた
「せっかく早帰りだし、やっぱどっか行かね？」
「どっかってどこ？」
「楽しいとこ♪」
そう言って二枚の紙をぴらっと見せて
「You And Ti (遊園地)！！」
意味分かんないことを口にするから、それは軽く流した
「遊園地かぁ。小学生ぶり」
だからものすごく楽しみなのだけど
少し浮かない気持ちになるのは
初遊園地デートの相手が、女装趣味の偽物の彼氏だからだろうか
うわぁ私、どんだけ可哀想な奴なんだろ
悲しくなってきたからやっぱ友たちってことにしとこ！
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作者名：ウサン | 作成日時：2016年8月8日 8時
