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「あ、いや、下心とかじゃないからね？？
もしAが気にしないんならって思って…」
「泊まる」
「へ？」
私のあまりの決断の早さにベクは拍子抜けした
「いいの？」
うん、と頷く
チャニョルをそばに感じるあそこに今は戻りたくない
だから
「泊めて下さい」
深々とお辞儀をすると上からくつくつと笑う声が聞こえてきた
「Aって危機感とかないの？」
「え？」
「俺だって一応男だから何するか分かんねーよ？」
確かにあんな目に遭ってすぐ、違う男の家に泊まるなんて鈍いにも程があるけど
「ベクはそんなことしない。だって私の女友だちでしょ？」
「………まあな」
最後の言葉だけがやけに小さかったのは気のせいだろうか
「んじゃ行くか」
そう言って伸ばしてきた手は
反射的にびくりとする私を見て引っ込もうとする
だからその手を追ってそっと握り締めた
「手、握らせて」
驚いて固まっているベクの目を見てしっかりと言う
するとベクは困ったなぁって眉を下げ、ふわり笑って握り返してくれた
ベクの手ってすべすべしてる
それに指も長くて綺麗
お父さんの手はゴツゴツ節くれだってて、男って感じなのに
ベクのは女の人みたいに小さくて繊細で
でも私の手を握る強さだけはやっぱり男だって分かる
例えるなら安心感？
包み込まれてる感じが心地良い
だからかな
私はこの手を離したくないと思ったんだ
お金を持っていなかったためベクに切符を買ってもらい、駅を降りた側のコンビニで下着とか必要なものを揃えて、ベクの家に向かう
歩いてて気づいたけどこの辺は大きくて立派な外観の家が多い
自分の家が小さいからそう感じるのかもしれないけど
これは明らかにそんじょそこらの家よりもデカい
もしかしてベクは金持ちなんじゃ…
ベクが歩みを緩めたのは今まで見てきた家の中でも断トツ大きな家の前
は？なんじゃこりゃ？
私はこの家に入るの？？
なんだかとても場違いな気がしてしょうがないんだけど
ドキドキしなからあとをついて行くと
ベクはその家には入らず、直前で曲がった
大きな家の手前に人一人しか入れない狭い路地があったのだ
あ、この家じゃなかったんだ…良かった
ハードルが下がったことに内心ほっとして間もなく、ベクはすっと手をあげた
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作者名：ウサン | 作成日時：2016年8月8日 8時
