第20話 思い出 ページ21
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───確か俺が、青葉城西に入学して2ヶ月ぐらいが経った頃だった。
「おばちゃーん牛乳パンある?」
購買の牛乳パンを頻繁に買うから、もう購買のおばちゃんとも顔見知り。
「あー残念ね徹くん。さっき最後の一個が売れちゃったとこなの」
おばちゃんの指差す方を見ると、友達と話しながら歩く女の子の後ろ姿が見えた。
「最悪だよ、お金払った後に気付くとか…」
「隅に隠れてたねー!でも牛乳パン2番目に好きなんでしょ?」
「そうだけど、チョコパンが残ってたならそっちが良かった…1番好きだから」
かすかに聞こえるそんな会話に俺は並べられたパンを見る。すると、隅っこに隠れるように一つだけあるチョコパンが。
「おばちゃん!これちょうだい!」
「はい毎度〜」
俺は急いでチョコパンを掴み女の子の元へと走る。「ねぇ君!」と呼びかけると不思議そうに振り返る女の子。
「チョコパン!交換しない?」
「え?」
牛乳パンを指差しながら笑いかけると、女の子の表情がぱっと明るくなった。
「いいの!?」
「もち!オレ牛乳パンが好きなんだ」
はいとチョコパンを差し出すと、女の子は「ありがとう!」と可愛らしく笑った。
「私はチョコパンが世界で1番好きなの!」
とっても幸せそう言う。
大事そうにチョコパンを抱えて、そんな風に好きって言ってもらえて、チョコパンが少し羨ましいぐらい。
「……世界で1番、なの?」
「うん!チョコパンが1番好きな食べ物だよ、珍しいって言われるけどね」
人懐っこく笑って「じゃあねーありがと」と俺に手を振る。チョコパンを持つ彼女に何か愛しさを感じた。
「ねぇ待って!名前は?」
「え…?夏川A…です」
「Aちゃん!俺、及川徹!1年!覚えててね!」
不思議そうだったが、Aは笑顔で「おっけー」と明るく言ってくれた。
「────…いいな。俺も好きって言ってもらいたい…かも」
遠ざかっていくAの背中を見つめながら、そんなことを思った。
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白鈴(プロフ) - 利人さん» 及川〜(笑) ありがとうございます 嬉しいです(o^^o)これからもがんばります!! (2017年3月24日 1時) (レス) id: 63f0029977 (このIDを非表示/違反報告)
利人 - あれ…及川………カッコいい… すごく感動しました!これからも頑張ってください! (2017年2月17日 18時) (レス) id: e5d1b4c8ae (このIDを非表示/違反報告)
白鈴(プロフ) - 小悪魔たんさん» わ〜ほんとですか( ; ; )そう言っていただけて光栄です!とても嬉しいコメント感激してます!こちらこそ、読んでくださりありがとうございました!! (2017年2月6日 22時) (レス) id: 63f0029977 (このIDを非表示/違反報告)
小悪魔たん(プロフ) - なんか、もう!超超超よかったです!!私、こんなに目が離せなくなったの初めてです!もう読んでてドキドキしました!こんな風にコメント書いたのも初めてです!こんなにいい小説をありがとうございました!!!! (2017年2月4日 15時) (レス) id: 5c5226b33f (このIDを非表示/違反報告)
白鈴(プロフ) - pipiさん» 返信遅れてしまい申し訳ありません!とても嬉しいコメントに、この小説をかいて良かったなと思いました( ; ; )テッシュ郵送するので住所教えてください(こわい) 読んでくださりありがとうございました! (2016年12月7日 20時) (レス) id: 63f0029977 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白鈴 | 作成日時:2015年5月10日 21時