口付けの意味 ページ31
｢･･･好き。｣
そう口に出すと、銀時は困ったように視線を下げる。
｢普段は頑固で素直じゃねェくせに。｣
そして掴んだままの私の腕を少しだけ上げると途端に不機嫌そうな声音で、
｢吉原で手当てしてもらったみてェだけど、縛られた痕は残ってんのか｣
と目を細めた。
｢かなりキツく縛られてたし、しばらくはね。｣
痕が目立つ割にほんの僅かな痛みしかないそこは、軽いアイシングだけで済ませてもらった。
｢･･･どうしたの？｣
手首の痕を見つめたまま、腕をなぞるように銀時の指が触れる。
｢えっ、ちょっと･･･！｣
慌てて引っ込めようとする間もなく、彼は拘束の痕の少し手前、ちょうど手の甲と手首との境目あたりにキスをした。
寸刻前の耳たぶへのそれといい、私は立て続けの慣れない熱に翻弄されるしかない。
｢･･･キスってする場所で意味が変わるらしいんだけど、知ってる？｣
不意に顔を上げたかと思えば突然そんなことを聞かれて、理解が遅れた。
｢･･･知ってる、けど、詳しくは思い出せない｣
うろ覚えの部分こそあれど、心臓がうるさく鳴る今は頭がうまく回らない。
｢手の甲へのキスは『敬愛』。手首へのキスは『欲望』。｣
｢･･･手の甲と手首の境目だったと思うけど。どっち？｣
｢まぁ、両方･･･？｣
｢敬愛はともかく、欲望って？｣
｢そんなもん色々あるだろ。恋人にこんな拘束の痕なんざ残されて。俺だってまだ拘束プレイしてねェっつーのに。｣
｢どこに怒ってんだか。｣
アホみたいなことを言う銀時に、普段なら蹴りでもお見舞いするところだけれど。
私もアホに成り下がってしまったのは、どうしてだったか。
｢･･･吉原で、あんな綺麗な人と仲良さげで、正直ちょっと妬いた。私が勝てる要素、まるでなさそうで。｣
｢全部受け止めてやるって言ってんのに、まだそんなこと気にしてんのか｣
｢気にするよ｣
どれだけ好きだと伝えてくれても、受け止めてやると言ってくれても、どうしたって足りない。
言葉ばかりじゃ物足りない。
だから。
｢･･･真似すんなって｣
銀時がそうしたように、私も彼の耳へとそっと口付けた。
｢お前からそんなことされたら、あらぬこと期待しちまうけど｣
｢･･･して良いよ｣
ソファーに背中が沈むのを感じながら、ぼんやりと思い出す。
耳への口付けの意味は『誘惑』だったな、と──。
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ξεグリムэЭ(プロフ) - えだまめンヌ。さん» ありがとうございます！ログイン情報を忘れて長らく更新できなかったアホなのですが(笑)引き続き頑張ります！ (2020年9月2日 2時) (
レス) id: 69bdc7b84c (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - しっかり掴まれていて、リアル銀魂！って感じが凄いなと思いました笑ええぇ…未だに驚かされています笑銀さんの生き様だとか、そういうものも盛り込まれていて一気に引き込まれました。この作品大好きです！！応援しています！！ (2020年6月18日 16時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - 昨日の夜この作品を見つけ、次の日が学校という事も構わず一気読みしてしまいました笑めっっちゃ面白い！！こんな事があったら、きっとキャラはこういう事を言うんだろうな、するんだろうなという部分を→ (2020年6月18日 15時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ξεグリムэЗ | 作成日時：2019年3月22日 6時
