第30話 ページ35
私の目は少しの光も見えなくなった。
目が見えなくなってから、あまり部屋から出ていない。
皆が来てくれるからと言うのもあるが、
何より何も見えないこの状態が思いの外怖いから
今日は変なぐらいの静寂を感じる。
まるで、嵐の前の静けさ。
＿ｼｬﾗﾝ＿＿
聞き覚えのない音だった。
その音と同時に物騒な雰囲気を感じた。
暫くすると私の部屋の襖が開いた。
『誰？』
「吉田松陽は何処だ？」
聞き覚えの無い男の声。
私は、何故か先生のことを答えてはいけない気がした。
『誰って聞いているでしょう？』
『答えないなら教えることは出来ない。』
相手の殺気に腰が引けるが、精一杯強がる。
呼吸をすることさえ躊躇いたくなるほど張り詰めた空気だった。
「貴様等の師である吉田松陽は我等天照院奈落の長だ。」
『…』
まぁ、難しい言葉が続き理解が出来ない。
先生が別の組織の長だったことしかわからない。
それも信じ難い話で。
『先生は、貴方達の長だったかもしれない。』
『けれど、今はこの塾。松下塾の先生。』
『何故、貴方達は先生に会いに来たの？』
「会いに来た訳ではない。」
『…』
「これ以上、関係の無い奴に話すことではない。」
『…』
訳がわからない。
「もう一度聞く。」
「吉田松陽は何処に居る？」
『…』
強まる殺気を感じながらも私は答えようとはしなかった。
「居場所を教えぬと言うならば、お前の役目はこれまでだ。」
「死ね」
その言葉と同時に、私の体に痛みが走った。
『…！？…』
右ふくらはぎを斬られたようだ。
次第に熱が集まり、痛みも強まる。
あまりの痛みに涙が流れた。
『…っ…』
顎に冷たいものを感じた。
きっと剣先が向けられている。
「吉田松陽は何処だ？」
『…し、知らない…』
痛みた恐怖に耐えかね口を開いてしまった。
「それは、残念だ。」
今度は胸に痛みを感じた。
少しずつ意識が遠退く。
「A！？」
先生が来てしまった。
『せん、せ……に、げ…て…』
声を振り絞って出す。
温かくて大きな手が私の頬に触れた。
涙が止まらなかった。
無くなりそうな意識の中。
『＿ごめんなさい。そして、ありがとう。＿』
しっかり伝えられただろうか。
私の最後の言いたかった言葉は。
完(仮)
ご愛読ありがとうございました。
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高杉るな - この作品はちょっと切なくて、良いですね!(いきなりすみません）あと作者さんが一生懸命(？）なのが分かります！更新､楽しみにしてます♪ (2017年11月28日 17時) (
レス) id: 264bb20a3e (このIDを非表示/違反報告)
甘党。(プロフ) - 夜空 星月さん» ありがとうございます！ (2017年11月26日 16時) (レス) id: 95933b74ce (このIDを非表示/違反報告)
甘党。(プロフ) - 夜空 星月さん» はい…。夢主には終わりがあります。余命と言う言葉があるなかでも皆さんの心が温まるような話に出来たらと思っています。 (2017年11月26日 16時) (レス) id: 95933b74ce (このIDを非表示/違反報告)
甘党。(プロフ) - ムクロさん» 提案ありがとうございます！松陽先生の傷は盲点でした…。これから先この作品に生かせたら是非使わせて頂きたいです…！ありがとうございます。 (2017年11月26日 16時) (レス) id: 95933b74ce (このIDを非表示/違反報告)
夜空 星月(プロフ) - 更新頑張ってください (2017年11月25日 14時) (レス) id: 5d15086cca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：甘党。 | 作成日時：2017年3月31日 13時
