もう元にはもどれない

スペアキー１０ ページ18

side 横山







シャワーを浴びた後
どっくんは帰って行った

とりあえず飯でも食うか･･･

そう思ってリビングに入ったら
さっきまでなかったはずの
コンビニの袋と
･･･ヒナが持ってる筈のここのスペアキー

キーの近くには数滴の水

ヒナの、涙やった



「･･･ヒナ･･･」



見られたんや、アレを



「･･･ヒナ･･･っ･･･ごめんっ」ｸﾞｽ



俺が泣いてどうすんねん
泣きたいのは、ヒナの方やろっ･･･


握り締めて、暫く泣いて
悩んで、悩んで
出た結論がこれ









「あ、ヒナ」



村「･･･ヨコ･･･お、はよ･･･」



「おはよ
お前、鍵忘れとったぞ？」ｽｯ



村「ーっ」ﾋﾞｸ



村「･･･ぉん、･･･ごめん、ありがとう･･･」ｷｭ



そう言って受け取ったヒナ
･･･何も言わん･･･悲しそうに笑うヒナは
なにも聴いてこない
ホンマは俺が言わなアカンはずやのに



「･･･ヒナっ」



村「打ち合わせ、行ってくる･･･」ﾌﾟｲ



「っ･･･おん、わかった･･･」



打ち合わせと言われれば
引き止める事も出来ひん

話す機会ならいくらでもあるやろう

そんな軽い気持ちだった









「ぁ、ヒナっ･･･」



村「ーっ、ごめん、次、あるから･･･」ﾊﾞﾀﾝ








ずっと、こんな感じ


話がしたくてもヒナが俺を避け続けてる


どうやって話をしようか考えていた
そんな時だった
自宅に戻ると手紙が来てて

見覚えがある字



「ヒナっ」ﾋﾞﾘ



「･･･っ･･･コレ･･･」ｺﾄﾝ



出てきたのはヒナに渡した筈のスペアキー
一緒に入っていた手紙には


【信じられなくてごめんなさい
待てなくてごめんなさい
もう、会えません
家に行くこともないでしょう。
ありがとう、幸せでした
愛してます、信五】


ヒナっ
ごめんっ
ホンマにごめんっｯ

俺も、愛してるっ



気がついたらヒナんちのスペアキーを持って
車を走らせてた








━━ガチャガチャ



「･･･っ、あれっ･･･？」



鍵、まわらへん･･･
何でっ･･･



━━ピンポーン



「･･･でぇへんっ」ﾄﾞﾝ



「･･･っなんでっ」ｸﾞｽ



ヒナが帰ってくるかもしれへん
そんな期待をしながら
部屋の前で座って待っていた


でも、ヒナが帰ってくる事はなかった

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