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夢を見た。
ひどく、暖かい夢。
しかしそれは気付けば悪夢に変わっていて、それならばいっそ、初めから悪夢なら良かったのにと思う。
幸せを知らなければ、不幸を知ることもないように。
心すら失ってしまえば、痛みを感じないように。
『じゆ、に……』
自由なんて、幸せなんて、望まなければよかった。
否、望んではいけなかった。
「……っ、は、」
目が覚めた私は、酷く汗をかいていて。
見慣れない天井に、胸がざわついた。
……あぁ、そうだ。
私は、彼らの家に。
昼間の賑わいが嘘かのように、辺りはしんと静まり返っている。
ドクン、と心臓が波打って、嫌な汗が背中を伝う。
頭も働かないままに立ち上がって、震える手を抑えながら襖を開けた。
___どうか、繰り返さないで。
「…おぉ、どうした?腹でも減ったか?」
そこにいたのは、昼間となんら変わらない銀髪の彼で。
彼が生きていたことに、ふっと緊張が解けたのが分かった。
「……多少顔色はマシになったな」
「…あの」
「ん、どうした?」
「すみません、迷惑かけて…」
「あん?迷惑だ?んなこと思っちゃいねーよ、元はといえば俺が勝手にやったことだしな」
それに、と彼が笑うと。
「ただいまー」
「鍋パ!鍋パ!きゃっほーい」
「神楽ちゃん、その前に手洗いうがい」
戸を開けた音と、楽しそうな声色。
「んなこと思ってるやつは、ココにはいねーよ」
面倒臭そうに、それでいてどこか嬉しそうに、彼は立ち上がった。
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作者名:日向 | 作成日時:2020年10月10日 23時