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「銀ちゃん銀ちゃん、なんかA、顔色…」
神楽が何かを言いかけたとき、Aの身体が傾いた。
俺の腕は考えるよりも先に動いて、なんとか彼女が倒れるより前に引き寄せた。
「おいおい、お前やっぱりまだ、」
「…すみませ、ちょっと」
まぁ恐らくは、貧血だろう。
あれだけ血を流していたんだ。
いくら傷が塞がっていようが、体に支障はきたしているはずだ。
「ま、今日は大人しく横になってるこった」
「…そんな訳には、」
「ハイハイ、怪我人は黙って寝てろー」
「心配いらないネ、私がちゃんと銀ちゃん見張ってるアル」
「お前それどーいう意味だコラ」
「そのまんまの意味ネ、」
「ったく、俺のことなんだと思ってんだよ」
「マダオ」
いつも通りの言い争いをしていると、彼女の纏う雰囲気が、僅かに和らぐのを感じた。
「…ゆっくり休むヨロシ」
「…そうだぞー、寝る子は育つって言うだろ」
二人してにっと笑ってみせると、彼女も柔らかく笑った。
「……ありがとう」
ぼーっとしていれば聞き逃してしまいそうなほどに小さく紡がれた言葉は、俺たちにはちゃんと届いていた。
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作者名:日向 | 作成日時:2020年10月10日 23時