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「ご迷惑をおかけしました」
「あぁ、気にすんな。……もし怪我が悪化したりしたら言ってくれ」
「金ぶんどりにくるからナ!」
「ちょっと神楽ちゃん、」
「……それは辞めてもらえると助かる」
なんだかバタバタと忙しそうな土方さんにお礼を言って、屯所の門へと向かうと。
そこにはジッとこちらを見る沖田さん。
「……送っていきまさァ」
ぶっきらぼうにそう言うと、さっさと私達の前を歩き始める。
「お前に送ってもらうほど弱くないアル!」
「違ェねェ。怪力チャイナと頑丈娘なんざ襲うやつはいねェだろーよ」
「……じゃあどうして?」
「最近不審死が増えてやがってな」
「……不審死?」
「あァ。突然熱が上がってそのまま死ぬのさ。無差別だがみんな揃ってなんかの薬品を打ち込まれた痕があるんでィ。何かを試してんのか、ただ殺してーだけなのかは知らねェがな」
ばくばくと、心臓が脈を打つ。
「それに、俺はこれでも一応悪かったと思ってるんで……って、どうした?」
「A、怪我が痛むアルか?」
熱が上がって、そのまま死んでしまう薬品。
……もしかして。
「…ううん、大丈夫。何でもない」
脳裏を過ぎった冷たい瞳に、ぞわり、と悪寒がした。
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「そんじゃ、俺はここで」
「ありがとうございました」
「さっさと帰るヨロシ」
沖田さんは私を見つめると、耳元で小さく呟いた。
"何考えてるか知らねーが、何かあったらお巡りさんに頼ってきやがれ"
きっと彼なりに心配してくれているのだろうな、と私は小さく笑う。くるりと踵を返して歩き出す背中は、逞しく見えた。
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作者名:日向 | 作成日時:2020年10月10日 23時