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「いませんね、クロ」
「大体よ、黒猫にクロって名付けるなんざ安直すぎんだよ、逃げ出したくもなるっての」
「分かりやすくていいじゃないですか、黒猫のクロ」
月日は淡々と過ぎていき、珍しく依頼が来たと思えば、内容は逃げ出してしまった猫探し。
なんとも万事屋らしい仕事だ。
「しかもよー、黒猫なんて全部一緒に見えんだろ」
「でも赤い首輪がついてるみたいですよ、ほら」
「はぁぁ、もうだめ?その辺の黒猫に赤い首輪つけて連れ帰っちゃだめ?」
「いいわけないでしょ、ちゃんと探しますよ。依頼があるだけありがたいんですから」
呆れた顔をした新八に大きなため息をつかれると、疲れがどっと押し寄せてくる。
神楽とAは定春に乗っていて、何やら楽しそうに話をしていた。
定春は鼻が効く。
適当に任せておけばすぐ見つかるだろうとのんびり路地を歩き続けた。
「クロー、どこアルかー」
「クロちゃーん」
「A、それはもう、わわわわぁだろ。大サーカス始まるだろ」
「銀さんちょっとやめて下さい」
ぱた、と急に定春が立ち止まると、ワン!と吠えた。
「どうしたアルか?定春」
定春が見つめる方に目を向けると、そこには目的の黒猫と。
「……テメェ、そんなに調教して欲しいんですかィ」
栗毛色の、彼がいた。
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作者名:日向 | 作成日時:2020年10月10日 23時