43 ページ46
No side
毒蛇を見送ったテラスとは違う部屋のテラス。
雲の狭間で輝く月星を捉えようと上を見上げる男の元へ歩み寄る1つの影。
「あぁ、こんな所にいたんですね」
「随分と城内が騒がしいが、暴徒でも殴り込みに来たか？」
「違いますよ。私の眷属達が連れて来た生娘が浴室に連れて行った直後に消えたんです！
全員で探し回ってるんですが見つからなくって……」
「逃げたんだろ。この城から逃げようとするなんて行動力のある奴だ。嫌いじゃないな」
そういうことじゃありませんって！と男の手首を掴んで廊下に連れ出す古城の百代目当主、饗宴の伯爵。
「全く。身を清めさせてから夕食を共にし、それから部屋にて美味しく戴こうと考えていたのに！」
「そういうのが顔に出てたんだろ。そりゃ女も逃げるわ」
伯爵の後に着いていく男は話相手のフリをしながら、頭の中ではこう考えていた。
あの女は生娘などではない……と。
使い古されたわけではなさそうだが、身を委ねる事を許し、長期に渡って愛を紡ぐ存在がいることが分かった。
「赤服、聞いてます？」
「すまない。何か言ったか？」
「貴方にも協力して頂きたいと言っているんです。見つけたら近くにいる侍女でも執事でも何でもいいので報告して下さい。頼みましたよ？」
「ハイハイ」
赤服と呼ばれた男は、目や胸から生えるツタを指に絡めて蝶のご機嫌取りをしながら遠ざかっていった。
足取りは外ではなくまたあの部屋に向かう。
そろそろ彼が帰って来ていることだろう。
ガチャ、と扉を開けると、音に反応したかあの鳥が赤服の方をじっと見ていた。
「無事届けられたみたいだな」
「どう、して」
鳥のいるテラスの方から、細々とした別の男の声が聞こえる。
「どうして、人間が、あの言葉を？」
「特別な訓練でも受けたんだろ。お前の友人も話せるだろ？」
「彼は、まだ若干片言です。でもあの人は、流暢に、話しました」
「お前がそういうモンだって見抜いたんだろ。俺は知らん」
目に星空、やせ細った体かと思いきや、6つに割れた腹の筋肉。
羽ばたく金の鳥の冠に、背中には異様な魔法陣。
頭から腰にかけて蒼羽を纏った、それはそれは不思議な生き物。
「なぁ、フェニックス。あの女をどう思う？」
「……異様、でした」
「お前がそれを言えるとは思えないが」
「見た目じゃなくて、雰囲気です」
「ふーん……」
優美なる夜空の下起こった事件の結末を知るのは一体誰なのだろうか？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 21人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
白狐-bilyakko-(プロフ) - 【湖の宝石】さん» でも、読んでて楽しかったです！それだけは正直に言います！ (2021年9月23日 18時) (
レス) @page4 id: df3d8cbea7 (このIDを非表示/違反報告)
白狐-bilyakko-(プロフ) - 【湖の宝石】さん» 前作でコメント返せなくてごめんなさい！まぁ、あの、理由があって返さなかったんですけれども(^_^;) 決して反応楽しんでたとかそんなんじゃないですからね！？ あと、迷推理ではなく名推理です！これからもどうぞよろしくお願い致します！m(__)m (2021年9月23日 18時) (レス) @page4 id: df3d8cbea7 (このIDを非表示/違反報告)
【湖の宝石】(プロフ) - なるほど…登場した人達がわかってスッキリしました。時々正解しててちょっと喜んでる自分がいますw 更新頑張ってください (2021年9月23日 18時) (レス) @page2 id: 664df39994 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：白狐-bilyakko- | 作成日時：2021年9月22日 21時
