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流浪者side
「抱擁、無駄だよ。その手をそこから離して」
「んーん…」
ぽうっと手の上に灯る緋の玉。鍵穴にかざせばジジジ…と音を立てるが、そう簡単には開かない。先程、ここにご主人様が降りて来たけど、入り口近くの奴を連れて行ったきり戻って来ない。
さっきから上が騒がしいし、どーせ宴会の手伝いでもさせられてんだろ。
「ん…」
「何、抱y…ちょ、待って！抑えて！口を閉じろ！」
ぼろぼろの布を着せられて、壁に寄りかかって目を閉じてうとうとする。
何か耳元が熱いなと片目を開けたら、顔に熱が篭って僕の首元にかぱりと開いた口を近づけているところだった。
本当のご主人様とその家臣の眷属である僕ら。抱擁はその2人の次、すなわち3番目に魔力の高い吸血鬼だ。その分、血の摂取量も僕より馬鹿みたいに多い。ただでさえこっちも喉乾いてるっていうのに盗られたら堪ったもんじゃない！
「くそっ、吸血鬼同士で飲み合ったらどうなるか分かってるだろ！」
「んんっ…！」
「君は血族の名を穢す気！？」
その言葉にピクリと反応して、牙と舌を仕舞い込む抱擁。
僕の袖を掴みながらその場に膝をつく。
「っ、ん？」
「何だよもう。ほっといてよ」
「んー！」
牢の外を指差す彼。耳を澄ませば、カツ…コツ…と遠くから靴の音が鳴り響いて来た。
僕らを処理目的で使う奴等の靴音じゃない。とっても上品な音だ。
石壁に固く取り付けられた金鎖が牢の手すりに近づく僕らを止める。
うぐっ、と首が絞まる感覚に吐き気を覚えて咳き込んだ。
『______にね』
音の主はこの牢の目の前で止まった。だが僕らに背を向けている。
反応を引くためにぐいっと靴を引っ張った。
『なっ、何！？』
「だ、れ……？」
ほわっと漂う甘い香り。一瞬で女性だって分かった。
でも何故こんな所に？いや今はそれどころじゃない！
その首に噛み付きたい！！
『貴方を助けに来たの』
「うそつき」
でもその後にご主人様の名称が出て、それが嘘でないことを知る。
僕は咄嗟に手を伸ばした。
その時に顔を覆っていたフードがめくれて。
赤とはまた違う海の底のような綺麗な碧。
隙間風が優しく彼女の横髪をさらっていく。
蛇のように光る目が僕らを見下ろしていた。
「きれい……」
これまでに何度も大勢の女の首に噛み付いてきた。
皆、甘くて美味しかったけれど、目の前にいるのがもっと美味しそうで。
これが俗に言う一目惚れとかいうやつ？
「ねぇ…」
君の血を頂戴？
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白狐-bilyakko-(プロフ) - 【湖の宝石】さん» でも、読んでて楽しかったです！それだけは正直に言います！ (2021年9月23日 18時) (
レス) @page4 id: df3d8cbea7 (このIDを非表示/違反報告)
白狐-bilyakko-(プロフ) - 【湖の宝石】さん» 前作でコメント返せなくてごめんなさい！まぁ、あの、理由があって返さなかったんですけれども(^_^;) 決して反応楽しんでたとかそんなんじゃないですからね！？ あと、迷推理ではなく名推理です！これからもどうぞよろしくお願い致します！m(__)m (2021年9月23日 18時) (レス) @page4 id: df3d8cbea7 (このIDを非表示/違反報告)
【湖の宝石】(プロフ) - なるほど…登場した人達がわかってスッキリしました。時々正解しててちょっと喜んでる自分がいますw 更新頑張ってください (2021年9月23日 18時) (レス) @page2 id: 664df39994 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白狐-bilyakko- | 作成日時：2021年9月22日 21時
