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9.眠れない子供 ページ9

家入side



 五条から夜になったら医務室にAが寝に来るからよろしく、と言われていたのにもう時計は夜の一時を指している。

 まだ映画を見ているのなら流石に夜更かししすぎだ。

 そう思って私は医務室の椅子から立ち上がった。


「おーい____」

 地下室の扉を開け、声をかけようと思ったがかけるのをやめた。

 映画はテレビから流れているのにAの目線の先にはおそらく寝ているであろう虎杖。そして、その虎杖のあたまを撫でるAがとても悲しそうな顔だったから思わず声が引っ込んだ。



「A………」

『わっ、硝子さん…!』


 頭を撫でていた手を引っ込めて、さっきの悲しい顔が嘘のようにころっと変わっていつもの優しく人懐っこい顔になった。


「私の前で別に無理に笑わなくていいよ」

『なんか久しぶりに動いて疲れちゃって』

「私の前では悲しい時は悲しみなさい」

『………硝子さん…隣きて……』

「ん、」

 私はよだれを垂らして寝ている虎杖をソファーから落としてAの横に座った。

『フッ、ちょっと、硝子さん、大胆すぎ』

「宿儺の器はこんなもんじゃ起きないだろ」

 それもそうですね、とAは軽く笑った。面白くない海外の古いロマンス映画が流れるくらい部屋でAは私の肩に頭を預けた。



「……思い出す?虎杖を見てると」



 私がそう聞くとAはただ頭をゆっくり縦に揺らした。



「似てるもんな。状況も雰囲気も」


『……まだまだ私は未熟だなって思いました…』


 そういうAの声は震えていた。

 何を言ってるんだ。この子は。4年眠っていてもう成人しているとは言え、中身はまだ16歳の少女。五条や夏油とかの起きていた人にとっては過去の出来事も、この子にとってはつい最近のこと。

 私の肩にAの涙が垂れた。Aは悪いと思ったのか私の肩から離れ、自分の手で目元を覆った。



『ああ、バカだなぁ………っ』



 そう言って息を殺して泣くA。

 あの時にそっくりだ。

 私はまた彼女の頭を自分の肩に押し付けた。






『…自分で殺しといて………っ』






 彼女は4年前の秋、彼女は人を殺した。


 唯一の同級生であり、




 唯一の親友を。

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みかん大福(プロフ) - 麗華さん» 麗華さん、リクエストありがとうございます!そして、返信遅くなってしまって本当に申し訳ないです!ぜひ書かせて下さい! (3月26日 14時) (レス) id: c872eeaaf1 (このIDを非表示/違反報告)
麗華(プロフ) - お話と設定がすごく好きです!リクエストなのですが…九十九由基さんとの絡みをやって頂きたいです! (8月11日 1時) (レス) @page44 id: bc106b5b68 (このIDを非表示/違反報告)
みかん大福(プロフ) - ナミさん» ナミさん、リクエストありがとうございます!書かせていただきます! (8月6日 12時) (レス) @page44 id: c872eeaaf1 (このIDを非表示/違反報告)
ナミ(プロフ) - すごく面白いです!リクエスト(?)なのですが2年生との絡みをもっとやってほしいです!できれば乙骨先輩もみたいです…。これからも更新頑張ってください! (7月26日 19時) (レス) id: cbde72f558 (このIDを非表示/違反報告)
みかん大福(プロフ) - しろりんさん» しろりん様、ご指摘ありがとうございます……!!全て修正させていただきました!本当に助かります!!嬉しいお言葉まで……!本当にありがとうございます🥰 (2022年9月14日 22時) (レス) id: d2d3b923b4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みかん大福 | 作成日時:2022年7月3日 16時

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