gin and tonic [kym×hkt] (ページ10)

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それから2日あいて、雨の降る日。

勤務をはじめて暫く、業務にも飽き始めた俺は、無心でカウンターに立つ

昨日買った小説は外れだった。主人公が怪事件に挑んだはいいが、いくら創作とはいえ違和感の連続で。

なんであんなんがベストセラーになった？世も末か？...なんて自分のブログに書き殴っておいた。俺はその感想を共有する相手も居ないからだ。まぁ欲しいとも思わないけど

おまけに、ベストセラーだからと言って安易に手に取るのは考え物か？なんて偉そうに締め括ってやった。てことで、今日の気分はあまり良くない

...にしても、雨の降る平日ど真ん中の夜。客の入りが最悪なのは、夜の仕事をしたことがない人間も想像に難くないと思う

「ジュリ独り占めなんだけど〜」

常連の女が、やばくない？と笑う。嬉しいくせに。あんたは馬鹿みたいに毎日来て週末になると "ジュリにあんま相手してもらえてないんだけど" つってクレーマーになるよな。今日みたいな平日ど真ん中だけ来りゃいいじゃないか。ここはホストクラブじゃないんだからさ。樹も"やべぇよな！誰か友達呼んでくんね？"じゃねぇよ。俺はこれに限っては暇な方が有難いんだよ

「...いらっしゃいませ」

普段出入り口付近にいる案内の男がそう口にすると、足音がこちらにやってくる音がする。...来客だ

「こちらへどうぞ」

"ありがとう"

案内を終えた男に向けられる落ち着いた声を確認する

「何にされますか」

俺はいつものように、手元に視線をやったまま訊ねる

「えーっとね、なんか甘いのがいいかも」

「かしこまりました。」

甘いもの...本人にそれ以外の希望はないらしいから、俺のやりやすいやつにしよう

「雨だね。やっぱ客足遠のいちゃってる感じ？」

「まぁ...そうですね。平日の半ばですし」