gin and tonic [kym×hkt] (ページ9)

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「...ここにさ、美人な男がくるでしょ」

「美人...」

なんだ突然。...こないだの人のことかな。そういやあれからみないんだよな

「ライラ頼んでたあいつ！」

「あ...いらっしゃってましたね」

間違いない。あの人のことだ。俺の酒を好きと言った、ちょっと...いや、ずいぶんと変わり者のあの人のことだ

「こないだやっと顔見てくれたって喜んでたよ」

"俺はそれ聞いて、なんだよそれって笑ってたんだけどね"

「そうなんですね」

どこまで言っても客のことだ。それ以上は踏み込む必要もない。楽しそうならよかったよ。と俺の中の樹が、そう呟いた

「君プライベートと仕事はっきり分けるタイプでしょ？そりゃたいがも苦労するわけだー」

"あぁ、まぁ...そうかもしれないですね"

そう俺が反応を示す。

くぅー！、そう言って馬鹿みたいに一気飲みしてグラスを空にした彼は、満面の笑みをこちらに向ける

「俺ジェシーっつうの。いつも来てる美人の友達。あの美人はたいがって名前だから覚えてやってね。大きいに我で大我ね。...あ、ちなみに美人って言うと怒るから気をつけて。中身は結構男らしいところもあんのよ！」

自己紹介の勢いから思わず手を止めて顔を見て話を聞いてしまった。

そしてそのまま嬉しそうに"ほんじゃ帰るわ！会計いくらよ！"とヘラヘラしている

「っと...2000円です」

「なぁんだそんなもん？もう一杯いってもよかったな...」

お釣りいらない、と彼はカウンターに5000円札を置いた。会計の倍置いていくのはさすがにワイルドが過ぎるだろ...なんて思いながらも、これは俺の臨時収入になるので返すことはしなかった

「ありがとうございました、」

「酒美味かったよ、大我もまたそのうち来ると思うからよろしくね！」

手をひらひらさせて、店をあとにする背中に改めて頭を下げる。...3000円、何に使おう。なんて考えている俺は、やっぱり客とはプライベートの関係にはなれないんだろうなと再確認した