gin and tonic [kym×hkt] (ページ30)

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「...急ですね」

「え、でも絶対思ってるでしょ？俺ここしか通ってないから。今までこんな頻度でこんなとこ来たことないしさ」

「そ、そうですか...」

緊張してるとか嘘だろ。なんなら酒入ってる時より饒舌というか、理性的な会話を投げてくる。後者に関してまぁそれは至極当然のことなのだけれども。意外と駆け引きとか苦手なタイプ？でも顔が綺麗すぎてあんまり信用できないというのが俺の実際のところ。人を見かけで判断するなとは言うが、現実問題それは厳しい。彼も例外ではなかった

「そんな変かな？なんなら今日終わったらうちくる？ほんと怪しいことなんもないから」

「あ、いや結構です...」

俺の勘ぐりはおそらく当たった。だって今の言葉丸々怪しい。夜職の人間しかも店でしか会ったことない奴家に上げようとする神経も誘ってくること自体も

いっそのこと酔っぱらいの戯言であって欲しいとさえ思った。それなら大我さんに幻滅しないで済む。ただ、金払いがいい客であってくれたら。俺としてはそれ以上何も必要なかった。必要としたくもなかった

プロ意識の欠片もない俺の、話題に左右される表情に気づいたのだろうか

"いきなり来たのにありがとね！そろそろ帰るわ！"

...彼はほんとうに、一杯だけ飲んでお会計をした

「あの、ごめんなさい...ありがとうございました、」

「なんで謝んの？こちらこそありがとね！」

あぁ、眩しい。俺の心の中に一点の明かりを点じるような、そんな笑顔だった