上京物語 ページ9
3時間。
其れが……家の在る長野の辺境から、東京·ヨコハマに来る迄に掛かる、時間だった。
2両以上の編成の長い電車、数分に1本の超ハイペースの時刻表、乗り降りする人の余りの多さ、入り組み過ぎている駅。
家を出てから1時間半が経った時点で、既に精神やら心やらが折れ掛かった私を、ヨコハマまでしっかり導いてくれたのは___
「__漸く着いたな……。薫、此処がヨコハマだ」
勿論、ヨコハマについて善く知っている、織田さんのナビゲート在ってである。
路線や道に迷った時、『3番目の角を右に』だの『青い看板で東京行の電車だ』だの……と云うか、殆ど織田さんが導いてくれた。
「おぉ、此処が、ヨコハマ…!凄い、都会だ…ビルとか沢山在る」
「都会だからな。寧ろ、俺は薫の住んでいた町に驚いた」
「う、そりゃ都会に住んでる人からすれば……はっ」
何気無く、織田さんと会話をしていた私は、次の瞬間に勢い善く口元に手を遣り、黙り込んだ。
そして、周りの視線を気にしてから、居た堪れない気持ちで人目の無い道端まで歩いて行く。
「そうだった……織田さんって“異能で造られた人間だから、普通の人には見えない”んだった…!」
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作者名:唯縁 | 作成日時:2018年4月8日 7時