上京物語 ページ5
突然の事に、私は驚いて悲鳴を上げながら尻餅を着いた。
拡大化した光帯は、不規則に高速回転しながら、火花の様な光と風を巻き起こす。
しかし、それは数秒で収まり、元に戻った部屋には___
「……初めまして、と云えば好いのか…?」
呆然とする私を見下ろす、見知らぬ大男がいた。
黄色のコートを着たその男は、先刻まで私が持っていた箱を持っていて……
「!?っ、だ…誰…!?」
数秒目を合わせてから、我に返り、ついでに声も裏返させながら叫んだ。
口をポカーンと開けた私とは裏腹に、謎の男は、澄ました顔で首を傾げる。
「俺か?…そうだな、自己紹介位はした方がいいよな。」
思い出した様にそう言った彼に、私は思わず、心の中で、
…えっ!?自己紹介、するの…?箱から人が出て来て、先ずは自己紹介なの!?
……と呆気に取られてしまい、尻餅を着いた侭、彼の言葉を聞いていた。
「俺は織田、織田作之助だ。君とは……勿論初対面だが、君の御母上の知人とでも云っておこう」
聞き覚えの無い名前、織田作之助。
気になる言葉、母の知り合い。
どっちも今の私は気になるものだけど、其れよりも、先ず、何より…!!
「え、えっと……織田さん、は…何で箱?箱から出て来たんですか…?」
最早一周周って冷静……とは少し違うかもしれないが、とにかくそう聞いてみる。
恐る恐る、彼が口を開くのを待って居れば、
突然。彼が持っていた箱を、ズイ、と私に差し出してきて、云った。
「…こんな物に俺が収まれた理由を聞いているのか?」
否、そういう事じゃ無くて……否矢っ張りそういう事…?
一瞬のラグを経てから、心の中でそう思ってしまったものの、口を開く空きも無く言葉は続いた。
「其れなら……此れが只の箱では無く、魂を閉じ込める類の異能だからだ」
タマシイヲトジコメルイノウ!
突然出て来た知らない言葉に、私は思わず「へっ?」と声を漏らしてしまう。
いのう…異能??其れは、つまり…?魔法とかそういう感じなのか…?
「…?……??…………あっ?」
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作者名:唯縁 | 作成日時:2018年4月8日 7時