上京物語 ページ4
ごくり、と息を呑みながら、恐る恐るその箱を引っ張り出す。
パッと見、真っ白で真四角な……そう、直径は15cmも無さそうだった。
一体何だ此れは?見た事無い…よね?
軽く振ってみると、中から音がしたので、何か入っているのは間違い無い。
箱に装飾は無くて、蓋らしい切れ目が上の方にあるだけだった。
「……………?あれ…?」
__のだが、開けようとして持ち上げてみても、回してみても、押してもビクともしない。
不思議に思って間近で箱を凝視してみると、蓋との区切りだと思っていた線に、ふとした違和感を抱く。
……あれ?普通フタって、ちょっと箱より大きいんじゃ…?
表面を横にして見てみれば、箱は綺麗な水平面を見せる。
「…………………もしかして、蓋じゃない…の?」
ボソリとそう呟き、箱をそっと床に下ろしたが、勿論一人きりの部屋に返事は無い。
数分くらい思考を巡らせた挙げ句に、私はそっと右手を箱に掲げた。
そのまま軽く拳を握って、人差し指と親指だけを伸ばす。
___つまり、拳銃の形。
ゆっくりと開いた唇から、私は私しか知らない“秘密の言葉”を呟いた。
「…__『エクス』」
次の瞬間、箱に向けた私の指が、“半透明に銀色に光る文字帯に包まれた”。
素早く回転しながら纏わりつくその光帯は、無数の羅列した文字で構成されている……
……ものの、早すぎて何の文字なのかは分からない。
光帯がある程度安定して回転しているのを確認した私は、続けて言葉を発した。
「……___『ブラックローグ』」
小さく、けれどハッキリとその単語を呟く。
その瞬間、それまで半透明の銀色に輝いていた光帯が、血のような赤色に変色した。
そして、人差し指から光帯と同じ赤色の光が発射される。
殆どゼロ距離で放たれたそれは、一瞬の内に箱へ到達し___
箱……否、部屋ごと半透明の銀色と赤色の光に包まれた。
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作者名:唯縁 | 作成日時:2018年4月8日 7時