上京物語 ページ12
「そう云えば…何故薫は制服なんだ?」
「え?……あっ、此れ…?」
唐突にそう云われた私は、制服なんて着てないけど…と思いながら自分の格好を見て、あぁと声を漏らした。
「此れ、確かにセーラー服ですけど……中学の制服、では無いんです…」
「何?違うのか?じゃあ何だ…?」
不思議そうに頸を傾げる織田さん。何と答えようか眉を下げる私。
今…というか、母を探しに都会まで来た私が、何も態々セーラー服_しかも制服ですら無い_で着たのに、何の理由も無い訳では無い。
……私が、自分が持っている服の中から、こんな目立つ様な赤い服を持って来たのは____
「えっと、この服だと……何でかは分からないんですけど…異能が、良く遣えるんです」
去年の誕生日に、母から買ってもらった唯の服………
…の筈なのだけど、一人で隠れて異能の試しをしていた時、この服の時だけは何時も上手く遣えた。
最も、その時は其れが異能だとも知らず、其の理由も偶然だと思っていたが……
「異能のトリガー…?何か関係が有るのか……否、真逆な…」
私と織田さん、二人揃って黙考し出す始末だった。
ふと考え出してみると、私は私で、色々と気になってしまう___
「____誰か居るのかい」
「!?!」
「ッ誰だ!?」
殆ど同時に、コンマ1秒の速さで、声のした方向__つまり、私達の来た方向を向いた。
突然の第三者の声に、目を見開き身を凍らせる私と、同じ様に……驚いた様に、目を見開く織田さん。
曲がり角から、何か出てくるのかと緊張する私に、後ろから小さな呟き声がした。
「…………___太宰…?」
刹那、突然私の体が持ち上がった。
物凄い速さで織田さんが私を抱き上げて、路地の奥へ走ったからだった。
「!?え、お、織田さッ…?」
「すまん、今誰かに見られるのは不味いんだ。舌を噛まない様じっとしてくれ…!」
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作者名:唯縁 | 作成日時:2018年4月8日 7時