1両目、出発進行。 ページ1
「なぁ山口!今日バレンタインだぞ!」
朝、日向がソワソワした様子で俺に話しかけて来た。
そう、今日はバレンタイン。
男共が浮かれてしまうのも無理はない。
「日向は結構貰えそうだよね」
「義理チョコなら!割と貰える!本命はない!!」
「おチビは余り物処理として都合良さそうだもんネ」
ツッキーがすかさず日向を揶揄う。
ツッキーは揶揄えるだけの実績があるから…。
「月島ァ……お前、顔は良いもんな!顔は!どうせ沢山貰ってんだろ!!」
「ツッキーは顔だけじゃないよ!沢山貰ってるのは事実!!」
「山口うるさい」
「ごめんツッキー!」
幼馴染の俺が言うんだから間違いない。
間違いないよ、
……チョコ渡す係の俺が言うんだから。
別に、ツッキーが魅力溢れる人間だって分かってもらえてる訳だから、嬉しいはずなんだけど。
でもやっぱり、虚しい。
時々俺にもお情けで小さいクッキーとかくれる子もいるけど、逆に虚しい。
「はぁ……」
そう考えれば、溜息が出てしまうのも仕方がない。
「山口くん?」
ツッキーと一緒に部室を出れば、可愛らしい声が掛かった。
「あ、谷地さん。おはよう」
「おはようございます!はい、コレ!」
笑顔で差し出された袋に、沈んでいた気持ちが一気に沸き立つ。
「ぇぇええ、お、俺なんかに?!いいの?!」
「いやむしろ私の手作り何かでお腹壊さないかなどうか、やはり市販の方が体調的にも……いやそもそも私が渡すということ自体が烏滸がましいかもしれないですけど!!」
「チョット、落ち着いたら?」
「そうだね落ち着いて!うわぁ、嬉しい、ホントに嬉しい!ありがとう谷地さん!」
他の子と比べたら全然出来悪いけど、と何時までもネガティブに走る谷地さんを止める。
「いや、泥団子だとしても谷地さんがくれたものは美味しいから大丈夫!!」
「泥団子は不味いでしょ…」
「山口くん、ありがとう…!!」
付き合ってられない、と呆れた顔をするツッキー。
ごめんねツッキー、でも俺、凄く久しぶりに俺宛のお菓子貰えた気がする…。
……まぁ、部員だから当たり前のように義理ですけども。
でも、谷地さんが作ってくれたのか、手作り…。
「山口、顔」
「いやぁ嬉しくて…」
表情筋に締りがなくなるのも仕方がないことだよね。
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nana(プロフ) - まとめ方がとても上手くて尊敬します! (2020年2月26日 14時) (レス) id: 8b7e89d888 (このIDを非表示/違反報告)
うどん - 山口君の小説有難うございます!とても面白かったです! (2020年2月20日 20時) (レス) id: 8f3ce9713a (このIDを非表示/違反報告)
ゆうかな - とっても面白かったです!やっと山口が報われるのを見つけた! (2020年2月19日 15時) (レス) id: 84f41cfd95 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あだしの。 | 作成日時:2020年2月13日 20時