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「なぁ、治くん。私、経営についてはこの四年間でしっかり学んできました。経済学部やったから、当然カネの流れもよぉ分かっとるつもり」
大人になった私達。夕飯を食べると必ず傍らにあるお酒も今日はまだない。お冷に入ってた氷がカランと音を立てる。
「料理の腕だって磨いたし、食品衛生責任者も防火管理者の資格も取った。お金も結構貯めたから銀行も少しは金貸してくれるはずや」
「ほんで？」
治くんの鋭い視線に一瞬息を呑むも、その息をゆっくりと吐き出す。大丈夫や、四年間この瞬間のために頑張ってきた、私なら大丈夫。もう一度大きく息を吸って、治くんの目を見て言葉を紡いだ。
「絶対に後悔させへんから、私を雇ってください」
頭を下げて、治くんからの返答を待つ。なかなか返ってこない返事に、心音がドクドクと脳に直接響く。治くんが立ち上がった気配がして、少し焦る。いや、流石にこの状態の就活生見捨てるとは思えんけど。
「A」
優しい声が頭の上から聞こえた。ゆっくりと顔をあげれば、少し瞳が潤った治くんが私を見つめていた。
「ありがとう」
そう言って抱きついてきて、それが採用の合図だと分かったから、治くんの背中に腕を回して力いっぱい抱きしめる。個室予約して良かった、二人して泣いてるところなんて見られたら何事かと騒がれてしまうから。
「治くん、絶対に幸せにしたるで」
「なんやプロポーズみたいやな」
「ふふ、結婚は店が安定するまでダメ」
お互いに見つめ合って、どちらからともなく唇を合わせる。
「八十八歳が楽しみやな」
「私らが一番幸せやって胸張れるな」
「これからもよろしゅうな」
「こちらこそ」
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ひーと - こんなに素敵な作品に出会えて良かったです！！！ (2020年5月17日 14時) (
レス) id: c8f6957e50 (このIDを非表示/違反報告)
koko(プロフ) - 素敵な作品ありがとうございました！！ (2020年5月14日 23時) (レス) id: de40817748 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あだしの。
| 作成日時：2020年5月14日 18時
